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ショート・ショート

嬉しいから、なんて

   2016年8月18日  

バレンタインデーに恋人同士になった二人が、誕生日を祝いにきてくれた。嬉しいことに間違いはないのだが、釈然としない想いがあった。

 

 
 最近、ふとやらかしたなあと思うことがある。

 家に帰ってすぐに鞄を床に放る。仰向けにベッドに転がった。頭の後ろに手を回して下敷きにする。
 ぼんやりと真っ白な天井を眺める。吐き出した息が震えた。

 バレンタインの日、長い間応援していた友人同士の恋愛が成就した。

 始まりは一年前。

 小林の出水に対する対応がどうも乙女っぽいと感じて、尋ねてみた。嘘がもともと得意な方ではないから、すぐに白状したね。
 それで出水にも少し鎌をかけてみたら、こちらもあたりだった。両片想いだったのだ。俺はどちらの話も聞いていたから、こいつら早くくっつかねーかなーなんて、一人でににやにやしていた。

 早く進展するように、いろいろとアシストをした。

 出水は結構察しがよい方だから、小林がもしかしたら自分に好意があるのではないかと気がついていた。けれどこいつに足りなかったのは、勇気だ。ある程度近づくことはできても、一線を越えられない。

 だから小林に想いが伝わるのに約三百六十五日もかかったんだ。

 って出水のせいにしてみるけれど、悪いのは彼だけではない。小林も小林だ。全く好意が伝わっていない。鈍感なのか天然なのか。どちらにせよ、出水がかわいそうなくらいだった。挙句彼女は出水が違う女子のことを好きなのだと勘違いし出してしまう始末。一度諦めようとしていた時期があったくらいだ。慌てて止めた。

 早まるな、出水はまだお前のことが大好きだぞ。このときこう言ってしまえば、もっと早くカップルが成立していたのかもしれないな。

 

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