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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第2話 王子と王女(2)

   2016年8月19日  

──生誕式パーティーに対し、言い知れない胸騒ぎを覚えるレイシー。
だが、式は四日後に迫っていた。──

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、王子と王女の運命の物語。

 

 
「まさか叔父様がパーティーに参加するとはね」

 ルイスは唇に指を当てながら、窓際に腰をかけた。彼の言葉に私は頷く。
 その通りだ。叔父様が祝いの場に参加する姿なんて想像も出来ない。それも、私達の生誕式に足を運ばれるだなんて、一体どんな風の吹き回しだろうか。

 ――――私達は、あまりこの国の王族に好かれていない。心から私とルイスの誕生日を祝う人間なんていないだろう。それがわかっているからこそ、不思議でならなかった。

「今まで一度も参加なさらなかったのに」
「…他にも気になることがある。これを見てごらん」
「? それは?」

 彼の手には一枚の紙が握られていた。恐らく、生誕式に参加する者のリストだろう。ルイスはその紙を一通り眺め終わると、私に向かって差し出した。不思議に思いながらも、紙を受け取る。
 一番上から順に目を通していくと、違和感を感じた。それは――――参加者の『出身国』だ。

「――――変だわ。バール王国とリュスト帝国にも招待状が送られているなんて」

 バール王国とカーネット王国は、決して両国同士で戦争をしないという、『禁戦同盟』を結んでいる間柄。だが過去に移民の件で先王同士が争ったというのも事実だ。それ以降に成立したこの禁戦同盟のお陰で、今は目立った対立は見られないにしろ、わざわざ国内に招くというのは些か疑問だ。
 リュスト帝国に関しては、よい噂を聞かない。民には辛い徴税を課し、他国との同盟を無視して攻め入り、侵略する。独裁的で、狂乱に満ちている国家だ。王族同士での激しい抗争は、継承権を巡って内戦にまで達するほどだと聞く。
 今まで一度も、カーネットの公式行事に参加したことのない両国を、本城に招くだなんて。こちらから両国に足を踏み入れたこともないのに、招待状まで出すのはどう考えてもおかしい。

「どうしてバールとリュストを…それも『王族』を招くなんて」

 一体、陛下は何を考えているの。

「まあ少し気になるけど、他の誰でもない国王陛下のお考えだ。僕達は従う他ないよ」

 ルイスはそう言って私からリストを奪い取ると、何の躊躇いもなく窓の外へと放り投げた。

「ちょっと兄様、どうして外に捨てるの? 片づけが大変だよ?」
「大丈夫だよ、ジンクが拾いに行くから」
「私は行きませんよ、殿下」

 冷静で、それでいて呆れたような声色。
 私はその声を聞き、扉の方へ顔を向けた。

「! ジンク! おかえりなさい、遅かったね」
「只今戻りました、姫様。遅くなってしまい申し訳ありません」

 彼はルイスの指示で、本城へ使いに出ていた。書類を取りに行くと聞いていたが、戻ってきた彼の腕には、書類にしては大きめの荷物が抱えられていた。
 何か補充しなければいけないものでもあったのだろうか。
 私は彼の傍に寄り、荷物を指差した。

「これは何? 重そう…」
「お二人の衣装ですよ。後程追加で装飾品等も送られてくる予定です」
「! そう、なんだ」

 私達の生誕式用の衣装も取りに行っていたから、帰りが遅くなったのか。

 ――――式は、四日後にまで迫っていた。そのせいか、本城もこちらの城も人の出入りが激しく、やけに騒々しい。本城の使用人ですら、滅多にこの城へ足を踏み入れないというのに、ここ最近はよく姿を見かけるようになった。特に、叔父様付きの使用人を見かけることが多い。

 

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