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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第3話 酷く、惨めだ(1)

   2016年8月22日  

──激しい怒りは、どこへ向かっても虚しいだけ。どんなに理不尽でも、抗えないことは惨めだ。──

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、王子と王女の運命の物語。

 

 
 私は廊下を歩きながら、昨日ルイスにもらったペンダントに触れた。滑らかな触り心地に思わず口元が緩む。はっ、として急いで手で覆い隠したけれど、傍には誰もいなかった。恥ずかしい思いをしないで済んだと安心し、廊下の先に目を向けると、見慣れた黒い背中が見えた。

「ジンク!」
「――――姫様、おはようございます」

 振り返り、深く一礼をしたジンクに駆け寄る。こんな朝早くから、どこへ行くのだろうか。

「今朝は随分とお目覚めが早いですね」
「うん、物音がうるさくて」
「物音、ですか?」

 訝しげに眉を寄せたジンクに頷き、今朝のことを思い出した。

 それは、窓の外もまだ暗く、日も上がっていないような時間帯に起きた出来事だった。突然数人の足音、そして床に響くような重い音が私の部屋の傍で聞こえたのだ。耳を澄まさなければわからないような音の大きさではあったけれど、生憎私の聴力は人よりも少しだけ優れているらしい。気になってしまって、そのまま考えている内に日が昇り、再び眠る気にもなれず、今に至るのだ。

「少ししたら静かになったけれど。また衣装が届いたの? それとも別の荷物?」
「そうかもしれませんね。それにしても姫様の眠りを妨害するとは…使用人によく言い聞かせておきます」
「それはだめだよ。お仕事をしてくれていた人達にお説教なんて、あんまりだわ」
「ですがっ」
「ね?」

 この城で働いてくれているだけでもありがたいのだ。
 困ったように笑いかけた私を見て、彼は渋々頷いた。

「ねえ、そういえばどこへ向かっていたの? 兄様のところ?」
「はい。姫様も王子のところへ向かう途中でしたか?」
「うん、朝のご挨拶に。ジンクも一緒に行こ!」
「はい」

 

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