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SF・ファンタジー・ホラー

ウパーディセーサ〈五十五〉

   2016年8月23日  

赤い部屋へようこそ。ウパーディセーサの皆さん。ここは僕の特別な部屋。赤に染めるためだけの、僕のためだけの部屋さ。ほら、あっちの壁をご覧

 

 
「じゃぁ~誰を指名しようかしら~。うん、やっぱりここは、すべての原因である君から殺すとしましょうねぇ。眇寨くんっ」
 松原は僕にウインクをしながら投げキッスをした。
 反射的に身震いをして、言い返そうとしたとき、体に激痛が走った。
「うわぁぁ、あぁぁぁー、あーあー」
 全身が溶けるように熱い。痛みを通り越して冷たい。息をすることも忘れてしまうような痛みに耐え切れず、僕はのたうち回った。
「さぁどーする? 平山ぁ、早くアタシを殺さないと眇寨くんが死んじゃうよ」
「平山! 何してんだ! 早く攻撃しろ。クッソ、俺が行く」
「手を出すな。宮守」
 松原を攻撃しようとした宮守を川上が止めた。
「これは平山の戦いだ。手出しは無用。それはわかっているだろう」
「でも、眇寨が……このままだと眇寨が!」
 その時、平山が口を開いた。
「眇寨は大丈夫だ。死にゃぁしねぇ。おい松原、知ってたか? 俺がお前のことを一番理解してることを。だからこそ、俺はお前を殺さなきゃならねぇ。そしてお前から今いじっているそのプログラムを奪い、破壊しねぇと、今後、眇寨が生き辛くなっちまう。そうだろう?」
 そう言って、平山は防犯カメラに向かって手を挙げた。その瞬間、松原が倒れた。
「ぐあぁぁ、ああーあーあー、ぎやぁぁぁぁ」
 僕と同じようにのたうち回っている。そして気がつけば僕の全身を覆っていた痛みから解放されていた。
「どうだ松原? お前はこれを眇寨にやったんだぞ。同じ痛みを味わうんだ。そして言うんだ。エリミネートマシンの解除コードと、眇寨のクイックシルバーを操っているプログラムのありかを」
 松原は白目をむいて痛みに耐えている。
「はぁ、はぁ、はぁ。いう、もんですか……」
「このままいけば、お前の心臓を貫くことになるんだぞ」
「殺せるもんなら殺してみなさい」
「あぁ、わかった。俺は既に三人を殺した人殺しだ」
 平山が大きく手を挙げた。と、同時に松原の胸から血が噴き出した。
 小さな銀色の玉がコンクリートの地面に数回跳ね、細い血の跡を床に描きながら転がった。
 松原の胸からはドクドクと赤黒い血がマグマのように湧き出ている。
 その胸の傷口を平山は瞬時に押さえ、聞いたこともない大声で怒鳴った。
「なぜだぁ。なぜこんなことをした。バカだよ、お前は……お前にならわかるだろう。俺が表情で相手の考えてることくらい読み取れることを……端末を介さずに電波を人にぶつけることなんてできねぇんだろ? 眇寨を殺す気なんてなかったんだろ? かつみょうに寝返ったなんて嘘なんだろ? なぁ、なんでだぁ、なんでだぁ……」
 松原は優しい目で天を仰いだ。
「ふふっ。だって、こうでもしないとあなたたち、行動に出ないでしょ? かつみょうはアタシの大切な人を殺した。大黒《ひろずみ》を殺した。そしていずれ、アタシも、あなたも、みんな殺される。これ以上、アタシの大切な人が死ぬのは嫌ぁ。こんな世界は嫌いよ。みんなが笑って暮らせていたあの日々が懐かしい。そしてそれを取り戻せるのは、あなたたち、ウパーディセーサなのよ」
「バカヤロウ……何言ってんだ。お前だって立派なウパーディセーサの仲間じゃないか」
「そう……アタシ、ウパーディセーサとして死んでいいのね……ありがとう。敦……初めてあなたがアタシの前に現れたときは、どうしようもない悲しみを背負った大男だったけど、今では立派なリーダーよ。本当にありがとう。防犯カメラから見ているアタシのことを覚えていないみんな……たくさんの笑顔と思い出をありがとう。みんなの笑顔が、アタシを今まで奮い立たせてくれていた。眇寨くん、鏡ちゃんを守るのよ……鏡ちゃん、どんな辛い現実が待っていようと、諦めないで……眇寨くんが守ってくれるからぁ。あぁ~ぁ、ロカビリーナイト、楽しかったぁ~。もう一度……あの日に……もどり…た……」
 うっすらと口元に微笑を含み、静かに目をつむった。松原の体は重力に逆らうことをやめ、地球の大地と化した。
「バカヤロウ。本当に。バカだよ……そんなお前という人間が、俺は大好きだったよ……」

 

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