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ハートフル

家族の肖像(6)~青春篇~

   2016年8月23日  

いよいよ映画の撮影へと入った。
遥の胸の内を知る利久であったが、利久もまた菜々美の素を好いていた。「告白しようと思う」そう利久に言われ遥は戸惑いを隠しきれなかった。

 

合宿2日目は良く晴れた空の下、映画の撮影が開始された。
菜々美は白いワンピース姿に、肩まである髪をクリクリに巻いて、ちょっとしたお嬢様風であった。
相手役の遥は、ジーンズのハーパンにブルーのタンクトップ、そしてクロックスを履き、地元の青年役だった。
菜々美は、避暑地に遊びに来ているお嬢様役で、二人は恋に落ちると言う、本当にべたな内容であったが、何故か葛西が撮影していくと、それなりに凝った演出もあり、ある程度高度な演技も要求され、本格的な映画となった。

『私、東京に帰りたくない。』
『俺も彩友美に東京に戻って欲しくない』
『恭哉君、私と一緒に逃げてくれる?』
『ああ、地の果てまで一緒に行くさ』

「はい!カット!」
葛西のカットが掛かり映像のチェックをする。
菜々美の隣からモニターを覗いて演技をチェックするのだが、菜々美からは、微かに香水のようなふわりとした香りが漂っていた。
その香りに遥はドキドキしながらモニターをチェックした。

「じゃあ、いったん昼休憩挟んで、次のシーンから採り始めるから。」
そう言って葛西は器材を一旦しまい始めた。
利久もレフ版や、パラソルを片づけ始め、遥もそれを手伝った。
遥は不意に葛西に尋ねた。
「先輩。やっぱり卒業後は映像関連の会社に勤めるんですか?」
「いや。映像とは全く無関係の仕事だよ。やっと内定も取れてるし、映像は趣味でこれからも続けてくつもりだ。人間好きな事ばかりじゃ生きていけないって事さ。遥。お前も俺より複雑そうだが、お前の良さわかってくれる職場に出会えるといいな」
そう言って、カメラバッグを担ぐと葛西は歩き始めた。
その後ろ姿を見て、遥は自分の心を見透かされているような不思議な気持ちになった。

昼食は、葛西の母親が作ってくれた特製カレーだった。
「これはね、ルーから香辛料混ぜて自分で作るのよ。しっかり寝かせてから、最後に素揚げした野菜をトッピングしてあるから、野菜のうまみも逃げてないでしょ?」
そう自慢げに話しながら、葛西の母親は料理を振る舞ってくれた。
「これ美味しい!葛西ママ私にもレシピ教えてくれますか?」

 

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