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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season14-4

   2016年8月26日  

 犯行予告の内容を話す光森警部補。だが、その内容について探偵たちは疑問がよぎっていた。

 お宝については納得がいかなかった。今回狙ったのは500万円のダイヤモンドだ。

 かつてない安い宝を狙っている。これだけでも模倣ではないか、という確証の疑念がよぎる。

 そして犯行予告の時刻も前回同様12時だった。探偵たちの脳裡に浮かぶのは、敗北の屈辱だった。

 模倣犯なのか、そうでないのか、とくにかく犯罪者が迫ってくるのであれば捕まえるのみ。

 警部たちも鼓舞するように士気が高まっていた。

 犯行時刻を過ぎた。

 模倣犯であることが明らかになった。警戒網に怖気づいたのだろう。

 警部は怒り狂っていたが。

 雲田と御影はこの模倣劇を推理していた。導かれた推理の行き着く答えはフェイクであると。

 このとき探偵、警部補はそれぞれの胸にうちに疑念が生まれていた。

 なにかがおかしいと。

 

 光森警部補が説明した。

 場所は南青山。個人経営している展示場。付近には根津美術館がある。

 北西の通りを抜けると原宿駅へ続く。六本木通り渋谷駅方面へ続く。

「逃走するとしたら、そのふたつのとおりかもしれない。人ごみに紛れて逃げるほうが追っ手を撒ける」川上がいった。

「はい、そうですね。こちらも周辺に包囲網を張ってます。だから逆に入ってくる不審な人物もマークしています」

「人海戦術は徒労がほとんどだ」雲田が冷たく言い放った。

「そうですね。盗っ人ひとりでは渋谷駅付近まで逃げ切られたらおしまいです。防犯カメラを解析する時間におわれ、犯人の最寄り駅まで追えたしてもさらに逃げているでしょう」

「狙っているお宝はなんなの?」水桐が目を輝かせてきいた。

「水桐探偵、目が獲物を追う目になってます」御影がこそっといった。

「うるさい」ちいさく威喝した水桐だった。

「こちらです」光森警部補は探偵たちを誘導する。「狙っている宝は500万円のダイヤモンド。ウォーターストーンと呼称される、わりと一般的よりお高めの品です」

「わー、きれいね」水桐はいやしくも目を輝かせていた。

 大地はのぞくように見ていた。少なからずダイヤモンドには興味はある。

「でも、これって…」御影がいわんとしていることは、おそらく全員が理解している。

「そうです」光森警部補はいった。「安すぎます」

「まったくだ。有明のときのお宝は500億だぞ」川上が500万円のダイヤモンドを指さした。

「いや、500億円で落札したから、持ち主がその値を時価価格にしていただけだ。「レッド・ダイヤモンド。100カラット」

「たしかに高すぎます。もっともあのダイヤモンドなら、それくらいの価値はやはり見込めます。専門家がテレビで話してたのを思い出しました」光森警部補はいった。

「水のように輝きを放つ石って意味でしょ、これ…。本物の怪盗レオパルドなら狙うとは思えない」御影はいった。「これが100個くらいあって根こそぎ盗むのであれば話はべつだが…」

「そうですね。でも、これはひとつだけです」光森警部補は困惑していた。なぜ、これを狙ったのか、理由がわかれば犯行予告の意味が解読できるというもの。

「まったくだ。ほんとうにこの犯行予告は徒労にならなきゃいいがな」雲田が冷ややかにいった。

「んー、やはりどうも合点がいかない」御影は不審に思った。

 探偵が思考をめぐらせていたためか、光森警部補が演説しないかぎり、この沈黙はしばらく続きそうだ。

 そこに慌ただしく駆け寄ってきた警官がいた。

「警部」警官は寺門警部に駆け寄った。「そろそろ時間になります」

「よーし! いいか、おまえら敵が怪盗レオパルドだろうと、ただの模倣犯のコソ泥だろうと関係ない。目の前の犯罪者を捕らえるだけだ、いいな!」寺門警部の心に火が灯っている。盗難に関する犯罪に情熱を燃やしているのだ。

「確実に逮捕されるな」川上は嘲笑するように笑った。

「真の怪盗レオパルドじゃなかったら、かわいそうな模倣犯ね」水桐も同感だった。

「でも、真昼の12時か…」御影は思い出していた。

 川上と水桐から笑顔が消えていた。

「それは有明の犯行予告とおなじ時間っていいたいのか?」雲田がいった。

「怪盗レオパルドじゃなきゃ、こんな真昼に時間を選ぶとは思えなくて、なんらかのトリックかフェイクがあるかもしれない。油断はできない」御影は真剣な顔つきになった。

「ああ、わかっている。それは話をきくまえから心の臨戦態勢できていたぞ。御影、ぬるいのか?」川上は鋭くいった。

「覚悟ができてなかったのかしら? 模倣だろうと関係ない。そういうところでは寺門警部と同感ね。泥棒猫を語るのであれば捕まえるだけ。二度とあんな愚行はごめんよ」水桐が吐き捨てた。

「わかってます」御影は気を引き締めるように両手で顔を叩いた。「さぁ、時間だ」

 

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