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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第4話 酷く、惨めだ (2)

   2016年8月26日  

──抗うことは、一人じゃ出来ない。同じ未来を望んでいないのなら、私は…あなたについていくだけ──

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、王子と王女の運命の物語。

 

 
「出て行け」

 ルイスがジンクの剣を勢いよく引き抜いた。だが、彼はその矛先を兵士達には向けなかった。ただ、剣を持っているだけ。それだけなのに、背筋が張り詰める。
 ルイスの纏う空気は、肌を刺すように痛い。私兵達を威圧するには十分だった。

「貴様等アース・カーネット付きの私兵がこの城へ足を踏み入れることは、今後一切許さない。叔父様にもそうお伝えしろ」

 反論を許さない勢いで、ルイスはそう言い放った。だが、大丈夫なのだろうか。相手は叔父だ。王子と言えど私兵の立ち入りを勝手に禁じては、また酷い言葉を浴びせられるに決まっている。
 不安で震える私の手に重なるルイスの手は、温かかった。その温もりが、臆病な私を包む。

「妹を泣かされて黙っているほど、僕は腰抜けじゃない。それも付け足してお伝えしろ」

 ────ああ、私は”また”、ルイスを傷つけてしまった。

「わかったらさっさと消えろ」
「────はい、殿下」

 ルイスに睨まれながら、彼等は庭から出て行った。
 城内への立ち入りを禁じられた彼等とはもう二度と会うことはないだろう。そう思うと、少しだけ安心が出来た。

「……泣かないで」

 けれど、私の涙は未だに止まらない。嗚咽を漏らし、腕で目元を覆った私の前に、ジンクが膝を突いた。

「姫様、お傍を離れてしまい申し訳ありませんでした」
「っ、馬鹿ジンク。私の言いつけ破ったでしょ」
「申し訳ありません」

 そう言って立ち上がろうとしないジンクの頭を私は一度だけゆっくりと撫でた。
 ────謝る必要はないのに。きっとルイスの方がジンクにこの件を問い質したのだろう。従者が主の問いに答えないわけにはいかない。それに、彼は叔父様の私兵相手に怯むことなく剣を抜いてくれた。私達の従者としての役目をきちんと果たしてくれたのだ。

「顔を上げて」
「……姫」
「……ごめんね」

 ただでさえ私達の従者という立場のせいで、他の王族の使用人達から一歩置かれているというのに、これ以上肩身の狭い思いをさせたくない。

 

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