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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第5話 迫る日 (1)

   2016年8月29日  

祖父の現国王と一年ぶりに顔を見合わせたレイシー。小さな王女の精一杯の兄への思いすら、王の視界にも映らない。

『そんな虚しい曇天よりも、ルイスに会いたくて仕方がなかった』

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、王子と王女の運命の物語。

 

 
「レイシー」
「! お疲れ様です。兄様も終わりましたか?」
「ああ。どうだった? 気に入ったかい?」
「……ええ。私の好きな青色のドレスでした」

 今日は、明日の生誕式に向けて、本城から来た使いと衣装合わせをしていた。それ故の、堅苦しい話し方だ。

 以前届いた生誕式用のドレスを試着したのだが、私にはもったいないほど豪奢なもので、気後れしてしまった。私の好きな青色の華美な花模様。それがドレスに広がっていて綺麗だったけれど、昨年のものよりも一層派手になっていて驚いてしまったくらいだ。

「兄様は? どんな衣装でした?」

 着替えの場としているこの一室の周りには、まだ本城の人間がたくさん忙しなく動き回っている。人目があるから、敬語のままの会話をしているが、少し窮屈だ。

「…………」
「兄様?」
「……王子らしい服だったよ」

 口を尖らせてそう言ったルイスを見て、私は笑いを堪えきれず、小さく微笑んだ。
 ルイスは正装が苦手らしく、普段はシャツとスラックスで過ごしていることが多い。さすがに国の公式行事でそれはまずいが。
 彼は恐ろしく整った顔立ちをしている美少年だ。着飾れば着飾るほど、華やかにそれは際立つ。

「早く見たいです、兄様のタキシード」
「お前に一番に見せるよ」
「……ねえ、その。聞きたいことがあるの」

 私の頬に手を添えて微笑んだ彼を見上げた。そして、こっそりと小声で尋ねる。

「"陛下に、お会いになった"?」

 ルイスの衣装合わせには、陛下が同席すると聞いた。もしお会いになられたのなら、些細なことでもいいから、あの方のご様子が知りたい。

「後ろ姿だけ、遠目に少し」

 

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