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SilverBeast番外編〜三つ葉のクローバー〜

   

 ウェルベント=ウィールター、15歳。
 その年に出合った少女は、ウェルベントに忘れられないものを残した。

 本編より11年前のウェンのお話。
 そして、ギンと出会う……。

 

 ウェルベント=ウィールターの家は田舎にしては裕福な方だった。
 少なくとも、食うに困った事はないし欲しい物もそれなりには手に入った。
 多少の不満はあっても、両親も共にいてごくごく平凡な家庭だった。
 そんなウェルベントが彼女に出会ったのは、15歳の春のこと……。

 最初は妖精かと思った。
 ホワイトクローバーが咲き乱れる草原を駆け回る妖精。
 たいして綺麗な容姿をしているわけでもないのに、その笑顔は幸せを運んでくれるようで……。
 何故だか、とても惹かれた。
 ウェルベントはただ呆然と、緑と白の自然が織り成すコントラストの中で舞う少女を見つめていた。
 しばらくして、少女は疲れたのかクローバーの中に倒れこんだ。
 白い小さな花びらが、僅かに舞う。
 ウェルベントは、そのまま彼女が消えるような気がして慌てて駆け寄った。
 近づくと、少女は予想に反してそこに居た。
 仰向けになって大の字で寝転がっている。
 近くに来たウェルベントに、少女は微笑み言った。
「貴方のお名前は?」
 話しかけられるとは思っていなかったウェルベントはドキリとした。
 すぐに答えないウェルベントに、少女は微笑み返すばかり。
「え……ウェルベント。ウェルベント=ウィールター……」
 ドキドキしながらも答えると、少女はニッコリと笑い名乗った。
「私はアリア。孤児院の子供だから姓はないわ」
 その言葉にウェルベントは少し目を見開いた。
 元々孤児の子供は、暗い子が多いというイメージを持っていたウェルベントにとって、そのことを明るく言える彼女が不思議だった。
 そうやって突っ立っているウェルベントに、アリアはあいも変わらず笑顔を向ける。
「貴方も寝転がったら?気持ち良いわよ?」
「え?あ、うん」
 アリアの提案に従って、ウェルベントは彼女の隣に寝転がった。
 青空が広がる。
 仰向けだと空しか見えないから、なんだか解放された気分になる。
 クローバーの緑の香りは、自然と言う大きな力の一部。
 空の青とクローバーの緑に囲まれ、ウェルベントは自然の一部になったかのような感覚に浸った。
「ね?気持ち良いでしょう?」
「……うん」
 ウェルベントは明るく優しい声に浸るように目を閉じた。
 これが彼女、アリアとの出会いだった。

 

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