幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ラブストーリー

輪廻転生ヒーロー 第0話「僕の英雄」

   2016年8月31日  

――災悪の降り注いだ世界を救い、<英雄の少女>人峰灯火はその後、少年の前から姿を消した――

青春×純愛の現代ファンタジー
『輪廻転生ヒーロー』
【毎月 第4水曜に更新】

この物語は、二度と少女を英雄にしないと誓った少年が、もう一度彼女と出会うお話。

 

 
――――ゴォウンッ

――――ゴォウンッ

 鐘の音のような轟音が町中に響き渡る。直接脳に流れ込んでくるその音と地面の揺れで、足が縺れた僕は地面に倒れ込んだ。ぐしゃりという音と共に体中に走る激痛。その感覚で一気に現実に引き戻される。
 段々とはっきりしていく意識の中で、僕の視界いっぱいに広がるのは、辺り一帯を埋め尽くして広がる赤い炎。建物はそのほとんどが崩れ落ち、瓦礫が地面に重なり、足の踏み場を奪っていた。大きく息を吸うと、煙と熱で肺が痛む。途切れ途切れに聞こえてくる町内のアナウンスは、尚更僕の恐怖を煽り、この現状を――――痛みを、嫌というほど思い知らせてくる。

 けれど、僕がここで恐怖に負けることは出来ない。この痛みは、僕の意識を保つ為の激痛だから。これだけが、唯一僕の意識を留めてくれる。
 ――――頬に手を伸ばす。ぬるりとした感触に僕は歯を食い縛った。右目からの出血が酷い。箇所の近くに指先が触れるだけでもかなりの痛みだ。けれど、痛みを感じなければ、今すぐにでも眠ってしまいそうだった。

「――――ッ」

 焦がす炎が、燃えている。瓦礫から湧き出し、僕の大事な町を包んで容赦なく奪っていく。その火は時々僕の体を掠った。その時の熱と同じくらい、右目が熱かった。

「とッ…ぐッ」

 口の中が切れているせいで、血が溜まり上手く言葉を発することが出来なかった。咳き込むようにしてそれを吐き出したその時、霞む視界の奥で、僕の『愛しい少女』が泣いているのがぼやけて見えた。
 僕は目を見開く。喉の痛みを無視して、熱い空気を吸い、声を振り絞った。

「”灯火ぁッ”」

 彼女の名を、僕は呼ぶ。幼い頃から慣れ親しんだその名の響きに、心が途端に満たされるのを感じる。
 僕の大事な人は、変わらずそこにいた。何も言わず、崩れていく町を眺めて、ただ、涙を流して泣いていた。

 ――――終わった戦い。その後に残されるのは、疲れ果て壊れた世界だ。
 人々の叫びの残るこの惨状に、彼女は今何を思っているのだろう。

 絶望に満ちた場所に、僕と彼女だけの二人が残されているこの状況こそが、『英雄の少女』人峰灯火(ひとみね とうか)がこの町に集結されたこの世の全ての災悪と戦った結末だった。

 炎の中、熱風に晒されながら舞う栗色の髪は、僕と同じ髪の色。その淡い色だけが、僕の滲んだ視界を癒してくれる。けれど、傷ついた体で立ち続けている彼女は靴すら履いていなかった。汚れてしまった白いセーラー服には、次々と赤い染みが浮かんでいく。僕なんかよりも酷い怪我を負っているはずなのに、彼女は決して、膝をつかない。彼女は決して、屈しない。彼女は決して、”負けない”。

 

-ラブストーリー
-, , , , ,

輪廻転生ヒーロー 第1話第2話第3話第4話第5話

コメントを残す

おすすめ作品