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SF・ファンタジー・ホラー

幻異綺譚<2> 幽霊

   

 小説の業界では、〈夢オチ〉、〈宇宙人オチ〉を使う者は一流と見なされません。
 これらでオチを付けるのは安易すぎるのです。
 〈幽霊〉も、同様、安易な題材ですな。
 さて、今回は幽霊の話。
 家門道一が、幻異の世界に棲む三流小説家であることの証明です。

 

 佐久間昭彦が、その幽霊を初めて見たのは中学二年生の時であった。
 近道をするために墓地を歩いているときに見たのである。
 夏休みのお盆。
 どうやら雨は上がったが、まだ降りそうな気配が残る夜。
 おあつらえ向きの場所と時間であった。
 墓石に囲まれた道を歩いていると、三歩ほど前方に幽霊が現れたのである。
 なぜ幽霊と分かったか?
 ぼんやりとした女の姿で、下半身は、闇の中に溶けて、無い――。
 白い姿を透かして、その先の道と墓石や卒塔婆が見える――。
 幽霊以外のなにものでもないのである。
 佐久間昭彦は、ただ、あ然とした。
 恐怖で悲鳴を上げることもしなかった。
 腰を抜かすこともなかった。
 ただただ、立ち尽くすだけであった。
 妙に頭が冴え、「へえ、これが本物の幽霊か」と、自分自身に納得しているのが、我ながら可笑しく感じるのであった。
 その幽霊は、成年の女性であった。
 半分透明な、ぼやけた姿ではあるが、顔ははっきりと分かった。
 目が大きく、唇が優しい。
 えくぼが印象的だ。
 その顔は、よく話にあるような、この世に恨みを残した表情ではなかった。
 佐久間昭彦を取り殺しそうな、鬼のような顔付きでもない。
 少し前方に大人の女性が立っている――、ただそれだけなのだ。

 

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