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SF・ファンタジー・ホラー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第7話 生誕式 (1)

   2016年9月5日  

本城へ出向き、着替えを済ませたルイスとレイシー。そこへ国王陛下が現れる。

『私は姫だけれど、この立場に甘えたくはないと思っていますから』

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、王子と王女の運命の物語。

 

 
 一年ぶりに訪れた国王陛下の城は、迫力と威厳を放っていた。私達の住む別城とはまるでかけ離れている。
 緊張してきてしまった。ここへ来ると、頭を過る思い出がたくさんあるから。もう今はいない"あの人"の声。そして――――母の温もり。あの幸せだった日々が、今でも忘れられない。
 私はまだ、立ち直れていないのだ。

「レイシー、大丈夫かい? 朝早かったからねぇ、眠い?」
「ううん、平気だよ」
「殿下、姫様。門が開きました。行きましょう」

 自分の頬に触れて、私は自分自身を落ち着けるように、深く深呼吸をした。そして、ルイスの手を引く。

「中で着替えもあるし、早く行きましょう」
「ああ」

 私達の目の前の高く隔てられた塀と、開かれた門。私達を追い出した王族のいる本城へ、今、足を踏み入れた。昨日のこともある、不安が募るばかりだが、行かなければならない。今日は、私達のパーティーなのだから。
 出迎えてきた使用人、兵士の間をくぐり抜け、私達は準備をする為に設けられた部屋へと向かった。
 その時、ルイスの前にある人物が現れた。その貫禄と強い眼差しに、ジンクが身構える。

「お待ちしておりました。王子、姫」
「エイビス殿っ?」

 大剣を背に担ぎ、男は私達に礼をした。
 意外な人物の登場に、私とルイスは顔を見合わせた。彼は、王国軍の中でも陛下直属部隊の隊長だ。そんな彼が、わざわざ陛下のお傍を離れて、私達を出迎えに来たなんて。

「何故、エイビス隊長が出迎えを?」
「陛下のご命令により、このエイビスが会場まで両殿下をお送り致します」
「? あなたがか?」

 何故、陛下ではなく私達に付き添うのだろう。
 ルイスもよくわからないようで、首を傾げたままその言葉に頷いた。

「そうか。わかった」
「よろしくお願いしますね、エイビス殿」
「はい、畏まりました」
「では、ここから両殿下は別室でお召し替え頂きます。レンカイズ王子殿下はこちらの部屋で。レイシー王女殿下はあちらの部屋で――――」
「いいや、一室でいい」
「! 兄様っ?」

 さすがに私も驚いて目を見開いた。それは、案内役の女中も同じだったらしく、焦ったように慌て始めた。

「で、ですが。それはっ…その」
「王女も連れて行く。僕達は別行動はしない」
「王子殿下、あの…着替えが、ございますので」
「それが何だ? 何か問題でも?」

 問題大ありだ。私とルイスは兄妹と言えど、性別が異なる。同じ部屋で着替えなど、反対されるに決まっている。

「兄様、彼女困っているわ。別室で着替えましょう。済んだらすぐに兄様の元へ参りますから。ね?」
「なら、ドレスを着たらすぐおいで。髪は僕が整えよう」
「はい、わかりました。――――あなた、案内してくれる?」
「は、はい、王女殿下」

 

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