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ショート・ショート

雨も風も

   2016年9月8日  

高校の夏休み、二人の知り合いの家に遊びに行くことが恒例だった。でももうできない。高校最後の夏の苦い思い出。

 

 
 玲さんは摘んできたシロツメクサの葉っぱで、葉っぱの冠を作っては他人の頭に乗せるのが大好きだった。植物が大嫌いだった彼女のお兄さん、英くんは何度も玲さんを叱ったが、その場でしょんぼりとするだけで、直ることはなかった。
 もういい加減、怒るのをやめてみたらどうなの? 梅雨が明けてミンミンぜみが鳴き出した昼下がり、スティックアイスをなめながら縁側に座ってぼやく。麦わら帽子をかぶり、ホースでひまわりに水をやっている英くんは、あいつは少し誰かに怒られた方がいいんだ。自由にやらせておいたら、誰も嫁にはもらってくれん。真顔で言うものだから思わず吹き出した。玲さんと英くんは三歳しか変わらないが、精神年齢は十歳ぐらい違った。

 英くんは植物が嫌いと言っておきながら、庭のひまわりの水やりだけは欠かさなかった。二人の家に遊びに行っていたのは高校の夏休みの期間だけだったが、毎日毎日半袖のパーカーに半ズボン、麦わら帽子というスタイルで水をやっていた。本当に植物が嫌いなの? 茶化すように尋ねると、こんな虫を寄せつけるだけの物体、嫌いに決まってる。仏頂面で言うものだから、やっぱり笑ってしまった。
 玲さんはたぶん、植物嫌いの兄が欠かさずひまわりに水をあげているとは知らない。ひまわりが水をもらっているときには、玲さんは家を飛び出してシロツメクサの葉っぱを探しに行く。庭にないわけではなかったはずなのに。

 

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