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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第8話 生誕式 (2)

   2016年9月9日  

国王から告げられた、あの言葉の真意。その末に下す、二人の判断とは。

『私はあの城で兄様と共に静かに暮らしていられたらそれでいい』

それはレイシーの小さな願い。

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、王子と王女の運命の物語。

 

 
 かつて、本城に住んでいた時のことだ。
 母が死に、私とルイスが二人っきりになってしまったある日、陛下は私達に仰った。『お前達は王の子ではない』と。
 その意味を知るには、私は幼すぎたから。だからルイスは――――私の代わりにその背に王族の汚い部分を全て背負ったのだ。

「王女よ。お前は己の父を覚えているか?」
「――――はい、陛下。覚えております」

 覚えているとも。あの、はにかむような笑みもまだ鮮明に思い出せる。まだ、忘れられない。
 私はルイスの手を握り、そう答えた。私のその小さな声を聞いて、陛下はとてもお辛そうに顔を歪めた後、ルイスへ視線を向けた。

「では、王子。お前はどうだ」
「…………」
「兄様?」

 何故、彼は答えないのだろう。

「よい。正直に申せ」
「――――陛下があの日、僕達に仰った通りです。"あの男"は、父親でも王家の人間でもない。僕はあの男のことなど忘れました」

 その声は低く、冷たかった。手から伝わる温度まで冷えきっていくようで、私は息を呑んでルイスを見つめた。
 ルイスのその言葉に、陛下は深く頷かれた。

「そうだ。あれは最早王家の人間ではない」

 陛下にとって、私達の父は自身の息子であるにも関わらず、"あれ"などと。そんなことは言わないでほしい。

「おやめ下さい、陛下。何故そのような……」
「己の妻も――――子供でさえも置いて姿を消した。あのような者に王家の血筋たる資格などありはしない。王女、お前もそれは十分にわかるであろう」
「陛下……」
「あやつはこの国の第一王子であった。即ち、国王ではなかったのだ。その者の子であるから、厳密に言えばお前達は国王の子供ではない。――――それが私が『王の子ではない』と言った理由だ」
「――――その陛下のお言葉を聞き、騒ぎ立てた王族がいた。それにより起きた民の混乱を鎮める為に、陛下は決断なされたのでしょう。"レンカイズとレイシーを隔離する"と」
「で、ですが陛下は私達を避けておいででしたっ。それは何故ですか? どうしてあの時、兄様の手を振り払ったのですか…?」
「レイシ―、よすんだ」
「私は!! ずっと、ずっと…お祖父様のあの目が忘れられません!!」
「……いいんだ。あれは仕方なかったんだよ」

 そう言ってルイスは、陛下の前だと言うのに、躊躇うことなく私を抱き締めた。落ち着かせるように背を撫でながら。
 それでも私の思いは治まらない。

「何故ですか、どうしてそんな大事な話をずっと黙っておいでになられたの?」

 私は、ずっと陛下のことを最低な人だと思っていた。私達を追い出した張本人だから。けれど、それが全て民の為。強いては、私とルイスの安全の為だったのだとしたら――――。

 陛下は私達の生誕式だけは毎年盛大に行ってくれていた。このドレスもタキシードも陛下がお選びになってくれた。それも私達の為なのだとしたら。私達はずっと、影からこのお方に守られていたことになる。

 

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