幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第9話 生誕式 (3)

   2016年9月12日  

生誕式パーティー、その最中に、レイシーは出会う。リュスト帝国の第三王子、イタラ・リュストと――――。

『私達、リュストとバールと"意図的に"会わせられたのかもしれない』

姫は――――気づいた。

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、王子と王女の運命の物語。

 

 
「各国の皆様方。本日は我が孫達の為にお越し頂き感謝申し上げる」

 陛下が各国の人間に挨拶をしている中、私とルイスは二人並んでグラスを持っていた。

「……何だか、慣れちゃったね」
「僕もだよ。それ酒じゃないか? こっちを飲みなさい」
「はあい」
「王子殿下、王女殿下」

 いつもよりも装いのいいジンクが、私とルイスの傍へ来た。その後ろには見知らぬ少年が一人。
 黒髪の奥で濡れる赤い瞳に、私は言い知れぬ不安を感じて、ルイスの背に隠れた。私の怯えを感じ取ったのか、ルイスも私を隠すようにして、グラスを置いた。

「その方は?」

 ジンクがその問いに答えようと口を開くと、少年が一歩前へ出て、にこりと微笑んだ。

「"リュスト帝国の第三王子"、イタラ・リュストと申します。お初にお目にかかります」

 リュストの……第三王子? この幼い少年が?

 ルイスよりも一つか二つ年下の少年にしては、"酷く恐ろしい眼光"を放っている。

「カーネット王国第一王子、レンカイズです。本日は僕達兄妹の生誕式へご足労頂き、誠に感謝しております」
「……後ろにいらっしゃるレディーは、王女殿下ですね?」

 優しい声色で私に手を差し出したイタラ殿。けれど、その手は取らなかった。息を吐いてから、ルイスの背から体を出し、足を交差させて、礼をした。

「……カーネット王国第一王女のレイシーです。ご挨拶申し上げます、イタラ殿」
「ああ、違います。私が知りたかったのはその名ではございません」
「? はい?」
「カーネットの王族は、皆様真名をお持ちだとか」
「!」
「何と……無礼な」
「ジンク」

 ジンクが歯軋りをして、イタラ殿を睨み上げた。その視線を遮るようにルイスが手を出した。そして、彼を下がらせると、私のことを再び後ろ背に隠した。

「イタラ殿。あなたはどうやら我が姫の王名さえも、知る資格はないようだ」
「ほう、それは何故です?」
「カーネットの王族の真名は、神聖なるもの。その名は、隠すことで価値を表す。第一王女に対して、何と無礼極まりない」

 ルイスもイタラ殿もその笑顔を崩さない。それが反対に恐ろしかった。場の張り詰める空気に、周囲の客人達も動揺し始めた。

「下がられよ。あなたとは率直に申して、相見えたくない。他国の第三王子ごときに、僕の姫の真名はお教え出来ない」

 

-SF・ファンタジー・ホラー
-, , , ,


コメントを残す

おすすめ作品