幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ショート・ショート

私は誰

   

真っ白な世界で告げられる。
「あなたには許されない罪がある」
目が覚めた私は聞いた。
『許されない罪だ』
罪など犯した覚えのない彼らの罪とは何でしょう。

 

 
 気がついたときには、真っ白な世界にいた。前後左右上下、どこを見渡しても白一色。足をつけているところが本当に床なのか、もしかしたらこっちが天井なのかもしれない。いや、そもそも壁なのかもしれないと思わせるくらいに区別がつかなかった。

 とりあえずまっすぐ進んでみる。だがしばらくして、自分は本当にまっすぐ進んでいるのかと疑い始めた。風景には微塵も変化がなく、ただその場で足踏みをしているだけなのではないか。そんな錯覚が襲ってきた。
 それでも足を動かし続けるしかなかった。他にどうすればよいのかがわからなかったのだ。

 やがて、目の前の空間が歪んだ。渦を巻くように、空間がねじれたのだ。吸い寄せられるように進んでいくと、足が液体に触れた。弾けるように後ろに下がる。歪みが消えたかと思うと、足元には大きな水たまりができていた。とうてい、またいで先には進めそうにない大きさだ。
 ただただ水面を眺めて立ち尽くしていると、波紋が広がった。それは次第に数と勢いを増していき、何かが飛び出してきた。とっさに腕で顔を覆う。襲いかかってきた水のせいで、頭からびしょぬれになった。

 おそるおそる腕をどかすと、全身を鎖で覆われた人間が水面に立っていた。

 腕を真横に伸ばし、自ら十字架を示しているように見える。鎖が突然引いていき、首から上だけを露呈した。眠っているのか、はたまた亡くなっているのか、目は閉じられ、肌は白い。

 一歩近づく。
 もう一歩近づく。
 もう一歩は近すぎる。

 くるぶしのあたりまで水につかった。

 

-ショート・ショート
-, ,


コメントを残す

おすすめ作品