幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

幻異綺譚<7> 婬肉寺始末

   

 忍辱とは、仏教用語で、苦労や侮蔑を耐え忍ぶ、という意味です。
 寺の名前を直截に『忍辱寺』とする、それだけで仏道修行の覚悟が伝わって来ますね。
 あ、それから、タイトルなんですが、何度やっても、『にんにくじ』の日本語変換が『婬肉寺』となってしまいました。
 おそらく、幻異のしわざでしょう。

 

 忍辱寺が創建されたのが何時なのか、はっきりとは知られていない。
 聖武天皇が国分寺を建立した後であることはまちがいない。
 国分寺は、国家鎮護のために建立された寺々である。
 忍辱寺は、国分寺の後背寺として創建された。
 つまりは、国分寺でも防ぎきれない国難を打開する、最後の砦として作られたのだ。
 創建された場所は、当時の国全体の要、臍となる深山の中である。
 忍辱寺に住まう僧侶たちには、高い徳が求められた。
 いかなる労苦や侮辱にも耐え、僅かな迷いもなく仏道に励み、そして国家鎮護を祈ることができなけれればならないのだ。
 そして、創建から、何百年という年月が経った。
 世は麻の如くに乱れた。
 至る所で戦乱があり、家臣が主君を裏切り、子が親を殺し、兄弟が争う、末世である。
 末の世。
 このままでは、国が滅びてしまう。
 忍辱寺では、さらに修行が厳しくなり、読経の声が大きくなった。
 今こそ、厳しい修行をし、迷わず仏道に精進しなければならないではないか。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


コメントを残す

おすすめ作品