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SF・ファンタジー・ホラー

幻異綺譚<9> 黒髪

   

 男と女の世界、これが変わることはありません。
 男は立身出世をあこがれ、女は愛する者が帰るのを待つ、この図式も変わりません。
 そして、幻異の世界も、変わることなく存在するのです。

 

 村木三郎時貞の持ち物は、わずかな所領と、屋敷だけであった。
 屋敷には若い妻がいたが、妻の世話をする下女もいない。
 なにしろ、三男に生まれたため、取り分は少ないのだ。
 ようやく生活できるだけの財産しか、分けて貰えなかったのである。
 木村三郎は、毎晩のように、妻を組み敷いた。
 武門の者として、跡取りを作らなければならないのだ。
 だが、妻との交接には、獣じみた激しさがあった。
 三男という身分の恨み、それのはけ口となっていたのである。
 妻は、何も言わず、よくそれに答えた。
 そして、それ以上に……。
 木村三郎は、毎朝、五百本の矢を射る。
 夏の暑い日であった。
 いつものように矢を射た後、いつものように妻が汗を拭いた。
 下帯も解く。
 そして、その日は、そのまま妻が口に含んだのである。
 木村三郎は驚喜した。
 妻は、何も言わず、婉然と笑った。
 その日から、妻との交接は、婬欲のためだけのものとなった。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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