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SF・ファンタジー・ホラー

幻異綺譚<10> 線路

   

 故郷へ帰りたいのに帰れない人がいます。
 故郷を棄てたはずなのに、なぜか戻る人がいます。
 故郷、それは幻異の世界なのではないでしょうか。

 

 山と道路に挟まれた草原の中に、赤錆た線路があった。
 30年ほど前の鉄道の名残である。
 廃線となり、線路だけが置き忘れられているのだ。
 その線路は、曲がりながらトンネルへ入っていた。
 小さなトンネルの先には、川がある、はずだ。
 川があったのだ。
 今でもあるのだろうか?
 松山民夫は、さすがに懐かしさを感じていた。
 小学校時代を過ごした場所なのだ。
 懐かしい……。
 だが、良い思い出ではなかった。
 ガキ大将にいじめられた場所なのである。
 トンネルの暗闇では、殴られた。
 川では、水の中に押さえつけられた。
 それどころか、脱いだ着物を隠されたこともある。
 裸で、家まで帰る……。
 長い長い道のり……。
 そういうときに限って、会いたくない人と行き会うものだ。
 学校でも美人で有名であった鹿山静枝と出会ったのである。
 鹿山静枝は、あぜんとしていた。
 松山民夫は、底知れぬ屈辱感に沈没した。

 

-SF・ファンタジー・ホラー


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