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ショート・ショート

パーシステントマウンテン

   

 消しカスというものは、捨てるべきものではないと、私は思う。

 

 明智光秀って、結構いい男かもな……と思ったときには、すでに午前2時だった。今日でフィナーレを迎える今回の期末テストのトリは、大好きな日本史であった。(結婚したいほど大好きでもないが。)
 私が勉強したことを証明するモノは、5枚のレポート用紙にまとめられた語句(私の大好きな山城の国一揆などなど)と消しゴムの消しカスのみ。いろんなところにばらまかれた消しゴムのカスを三角定規の1辺でまとめると、昔に私が通っていた小学校の校庭にあった『がんばり山』を彷彿とさせるような山が出来た。(『がんばり山』については後日思い出すことにしよう。)三角定規のひらべったい面をがんばり山の上にのせてプレス――圧力を与える。ぎゅうぅっ……ぎゅうぅぅっ。私の胸みたいにがんばり山はペッタンコになった。直径は約2センチ、円形である。
 ……さてと。
「いただきまーす」
 私は三角定規からペッタンコになった消しゴムのカスを剥がした。あらかじめ用意しておいた小皿に醤油を少しだけ注ぎ、薄くプレスされた消しゴムのカスに醤油をちょっとだけ付けた。
「あっ、わさび。」
 ナンテコッタ。不覚にもわさびを忘れていたよ。これを食べるのはゴブサタだったからなあ。あ、やっぱり今日はやめた。
 醤油がレポート用紙に一滴零れたのを軽く気にしつつ、私は『ゴム刺』をパクりと食べた。うむむ……わさび無しでもなかなかよい味だ。
「期末テスト最終日はやっぱりこれだよねっ」
 語尾に『☆』を付けたくなるほど、消しゴムのカスの刺身――略して『ゴム刺』は美味しかった。くちゃくちゃとした食感、ほろほろと崩れる消しカス……懐かしかった。小学生のとき、いじめっ子に無理矢理消しゴムのカスを食べさせられたときから、私は消しカスが好きになった。そして、私はそのいじめっ子のことが好きだった。
「ごちそうさまー」
 思い出に浸るより、醤油に浸した消しカスの方がいいな…と、高校生にもなってこれはまたバカなことを思った。
「……さっ、やろうかね」
 新たな消しカスを貯めるためなのか、はたまた本当にやる気になったのか。答えは消しゴムの減り具合だけが知っている……ような気がする。

 

≪おわり≫

 

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