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SF・ファンタジー・ホラー

アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第10話 今になって目に浮かぶ光景

   2016年9月16日  

レイシーを襲う悪意。それは彼女の大切な人の温もりを奪い去る。

『どうして、こんなことになってしまったのだろう。この燃え盛る全てを見つめても、答えは出なかった』

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、王子と王女の運命の物語。

 

 
「やっぱり、こっちの城の方が落ち着く」

 夜風に当たりながら、私は舞い上がる髪の毛を押さえた。夜も深まったこの城の庭は、とても静かで、心地よい。
 パーティーの余韻のせいだろう。眠れなくて外へ出てきたけれど、段々と心が落ち着いてきた。

「…………」

 生誕式最後の場面でルイスがしたこと。その後駆けつけたウィリーとジンクによって、あの場の混乱はことなきを得た。無事、生誕式を終えることが出来たのだ。
 そしてすぐに、私とルイスは陛下の元へ足を運んだ。謝罪と感謝を伝える為に――――。
 私達は昔、決めたのだ。ここで、二人で生きていくと。
 陛下が私達を嫌っていたわけではなかったとわかった今でも、その決意は変わらない。尚更、強くその決意は固まった。

「私達が本城へ戻ったら、陛下に無駄な心労を与えることになってしまうもの」

 陛下は王族を黙らせると仰った。だがそれは容易なことではない。叔父様だっていらっしゃる。彼は私とルイスに好意を抱いてはいないから、きっと反対なさるだろう。そうなれば、陛下と叔父様は対立することになってしまう。

「これ以上、王家に混乱を招いちゃだめ」

 だから、これでよかったのだ。
 今後は、陛下もこちらに頻繁に訪れて下さると仰ってくれた。私達も、本城へ出向くことが増えるだろう。それだけで、十分だ。少しの時間でも、陛下のお傍で笑うルイスを見ることが出来るのなら、それでいい。ここで、静かに彼と生きていこう。

 そう、誓った時だった――――。

 キィイイインッ――――

「っう」

 金属の擦れるような音。耳に響くそれに私は耳を塞いだ。――――それは正しい判断だった。

 バァアアアアアアアンッ!!!!

 続いて聞こえてきたのは、"爆発音"。低く重いその音と衝撃が私の体を吹き飛ばした。背後の壁に勢いよくぶつかって、激しく咳き込み、倒れ込む。

「う……ッ」

 かろうじて、頭を守ることが出来たおかげか、意識はある。体中に走った痛みよりも、この状況を理解することで頭がいっぱいだ。
 先程の金属音は、爆発の前兆だったのだろうか。本来ならば、そこまでは聞こえないものなのかもしれないけれど、私は人よりも聴力が優れている。咄嗟に耳を塞いだことで、鼓膜と衝撃を受けた体を守ることが出来たのだ。

「……な、に。何なの…?」

 目を開き、身を起こした私の前に飛び込んできたのは『炎』。それは庭を包んで、容赦なく焦がしていく。
 一番火の手が強いのは、私とルイスがよく凭れる大きな樹の傍だった。倒れてしまったその樹から広がるようにして、熱が蔓延っていった。

「"爆……発……?"」

 何故、庭でそんなことが。
 痛む体を必死に抱き締めて、私は呆然と座り込んだ。
 ――――庭が、燃えている。私とルイスの思い出が、消えていく。

 バァアアアアアアアンッ!!!

 再び爆音が響き渡った。音が聞こえたのは"頭上から"。私は咄嗟に上を見上げながら、壁から身を離した。パラパラと硝子の破片が落ちてきては私の頬を掠めて、地面に落ちた。

「どうして」

 "私の部屋が、燃えているのだろう"。
 激しい炎と煙。黒煙の出る割れた窓の先にある部屋。そこは紛れもなく私の寝室だった。本来ならこの時間、私はあそこで眠っていただろう。もし、今庭へ出ていなかったら、私は――――。

「巻き込まれて、いた…」

 

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