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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第11話 私の存在意義

   

ルイスと合流したレイシー。だが、彼等を追い詰める兵士達は攻撃の手を緩めない。
自分を守り、戦う兄を見て、涙が止まらなかった。

『この城も――――この世の全てが、私に惨い現実を突きつける』

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、王子と王女の運命の物語。

 

 
 私達が一体何をした――――?

 リュストからもバールからも、そしてカーネットからも死を望まれている。それは一体何故。私もルイスも害なすことは一切していない。平穏の中、生きていくことを選んだのだ。
 それなのに、ウィリーは殺された。彼が殺される理由なんてなかった。あの優しい人が、無惨に命を奪われる理由があると言うのなら、それはだ。

 この城も――――この世の全てが、私に惨い現実を突きつける。

「……ルイス」

 この薄暗い世界の中で、唯一あなたのくれたこのペンダントだけが色を持っていた。

「いたぞ!! 王女だ!!!」
「生きていたのか!?」
「ッ――――!」

 炎の波の向こうから、数人のリュスト兵が現れた。朱色の衣が炎に揺らめくその姿を見つめて、私はウィリーの亡骸を抱き締めた。
 この人達も私を殺しに来たのだろう。
 あっという間に目の前へ迫った兵士は、私の様子を見て、一度だけ躊躇うように動きを止めた。そんな彼等を見上げて、私は問う。

「私を殺す理由が、あなた達にあるのですか…?」

 どうして――――私達の死を望むの。

「どうして、こんなことになってしまったの…?」

 止まらない思いは、雫となって溢れ落ちる。
 どうしようもない現実の中でも、私はまだこの状況を受け入れられずにいた。

「っか、構うな! 殺せ!」
「……………」

 迷いが表れている矛先。自棄になって翳された剣が私の首をめがけて降り下ろされたその瞬間だった。

?」

 透き通るような声。炎の立ち上るこの空間で、『彼』の声だけが清らかなまま。けれど、怒りに満ち溢れたその声色は、耳に入るだけで、私の感情を強く揺さぶった。

「兄、様…?」

 ルイス――――私の愛する王子。
 私と彼の視線が交じり合い、ルイスはその手に握っている剣に力を込めた。

「リュスト帝国の憲兵が揃いも揃って何の真似だ…」
「に、さま」

 よかった、無事でいてくれた。目立った怪我もしていないように見える。

「さっさと退け!」
「ッグ」

 ルイスは一瞬とも言える早さで、私の目の前のリュスト兵を薙ぎ倒した。地に伏した兵を睨む緑色の瞳が、炎に反射して赤く煌めいた。

「エリザっ」
「ルイス……うっ、うぅ」
「酷い怪我じゃないか……遅くなってごめん」

 求めていた人が、今私の前にいる。
 けれど、彼を抱き締める前に、伝えなくてはいけないことがある。

「ウィリーが……リュスト兵にっ」
「!! ウィリー……何故」

 私の膝の上の存在を確かめて、ルイスは顔を歪めた。その表情に宿るのは、悲しみと怒り。彼は震える手でウィリーの冷たくなった頬に触れると、目を閉じた。
 そして、目を開いた。その瞳は悲しみを捨て去っていた。まるで、何か枷が外れたような瞳に私は体を震わせる。

「ウィリー……今は許してくれ」
「…………」
「――――立てるかい、エリザ。行くよ、ここから逃げるんだ」

 そう言って私の膝の上からウィリーを下ろして、ゆっくりと床の上へ横たわらせた。ルイスはそれ以上ウィリーに目を向けることなく、私の手を引いて走り出した。

 

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