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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season15-1

   

 謝罪会見がいまはじまろうとしているとき、氷室探偵事務所の探偵たちも注目していた。

 まさかこれほどの注目を浴びて世間をにぎわし、世界をも日本のイメージを崩すほどの体たらくな姿を露見させるとは、メディア、一般市民、そして政界ですら想像できなかったことだろう。

「この世の中をー!」

 ひとりの政治家が世界を変えられるわけでもないのに、この泣き叫ぶなか、みっともない言い訳をテレビ画面から見せている。

 滑稽で哀れな身勝手な男を、だれひとりとして同情などしない。

 ならず者の探偵たちですら税金は納めている。それを個人の欲望のために使い込んだとしれたら怒らない者はいない。

 どれだけ謝罪しても、庶民は許しはしないだろう。

 奇抜で滑稽な謝罪会見はすぐに世界配信された。

 マスコミ、メディアは一面記事、トップニュースとして取り上げた。

 ほかにも取り上げるべきニュースがあるというのに。

 

 世間をにぎわすひとりの政治家がテレビで謝罪会見をしている。それはそれはとてもみっともなく、哀れで滑稽としかいいようがないほどのお粗末な姿を世界に配信されている。

「この世の中をー!」泣き叫びながら咆哮して、テーブルを叩いて喚いている。そして嘆いている。

 悲しいこともあるけれど、なんとかみんなやっている。どこかで聞いたことのあるフレーズが思い浮かぶ。

 政治家は政治家らしからぬ行為をしたのだ。そして世間は彼を許さない。

「この議員、マジで笑っちゃうよな」川上は嘲笑していた。

「ふざけんなよ、この腐れめ」水桐はいつになく過激な口調だった。

「どうしたのだね?」森谷はさすがにその言葉使いを咎める。「レディーにあるまじき言動」

「だって、政治家の活動は、一般市民の税金が給与になるんでしょ…。しかもそれってわたしの金ってことでしょうよ、ああ腹立つわ、食わせてやってるのに!」

「きみは税金を払っているのか?」火守が水桐を見くびっていた。

「もちろんよ、火守探偵さん」水桐は誇示するように笑みを浮かべる。

「ほう、なかなか、えらいもんだな」火守が褒めるが、税金は支払うのが当然の義務。もちろん火守も納めている。

「消費税でしょ」水桐は頬を吊り上げて満足そうにいった。

 火守やほかも引き攣るように頬が吊り上がっていた。だれもそれいじょうのことは指摘できない。

 後ろめたいプライバシーには踏み込めない。

 大地と雲田はお茶をすすっていた。このふたりもまた社会に関心をもたない者だ。とりわけ探偵とは無法者。だから税金だの、なんなのってことに社会に関わりをもつことに背をむける者だ。

 もっともそれぞれの私生活まで知り得ている関係でもなかった。

「みんな、謝罪会見の途中っすよ。インパクトあり過ぎこの議員…」御影はテレビの画面に食いついていた。

「ろくでもないやつだよな、こいつ…」川上が揶揄した。

 このときばかりは全員が「ああ」と同感し頷いた。

 

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