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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第12話 愛しい家族

   

(第一章終幕)
抗えない運命と失われていく大切な者の命。
取り戻すことの出来ない、かけがえのない全て。
幼き王女は思う。この結末は間違っていると――――その心こそが、彼女の戦いの始まりだった。

『泣くことしか出来ない。そんな私を、何故皆はああまでして守ってくれたのだろうか』

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、王子と王女の運命の物語。
そして、二章へと続く。

 

 
 ルイスと二人で生きることを望んだ。今まで通り、彼といたかった。
 けれども、それは叶わなかった。大切な人が――――ウィリーが死んだ。私達に危険を知らせようとしたが為に、リュスト兵に殺されたのだ。何故ここまでされる。私達が何をした――――? ここまで追い詰められるほどの何かが、私とルイスにあったと言うのだろうか。

「気高き子達よ、
「「!!」」

 瞬間、身を包んだ深い温もりに私とルイスは同時に目を開けた。そして、その目を見開いた。私は自分の体から、力が抜けていくのを感じ、小さく呟いた。

――――?」

 身に染みる低い声。そしてこの匂い。これは紛れもなくこのカーネット王国の『国王』のものだった。
 陛下は震える体で私とルイスを抱き締めていた。その大きな体の向こうで、兵が後退るのが見えた。

「ッ、ひ」

 そして――――気づいた。
 彼の

 陛下の唇から血が溢れる。それは、私の頬に伝った。生温く広がる鉄錆の匂いに、私は悲鳴を押し殺すようにして口元を手で覆った。情けなくガタガタと震えながら私は陛下を見上げた。
 私達を庇い、兵の剣を受けた陛下は、苦し気に息を吐きながら、私達を守るように抱き締めた。盾になろうと、敵に背を向ける。

「ッお祖父様ッ…!」
「……何故ですか」

 叫んだ私とは反対に、ルイスは呆然と呟いた。その目は血走り、涙を流す。私も嗚咽を堪えながら涙を流した。
 こんなこと、あってはならない。医者に看せてどうにかなる傷ではないことは私にもわかった。だからこそ、認められない。受け入れられない。
 火の海を掻い潜り来てくれたのだろうか、陛下の服は汚れ、体は火傷を負っていた。
 陛下はゆっくりと手を伸ばし、ルイスの拳を握った。そして穏やかに微笑む。

「息子とお前の顔が重なった。それ故、あの時手を振り払ってしまった。だが、もう二度とこの手を振り払いはしない」
「……! いいんです、わかっていました」

 ルイスは引き止めるように陛下の手を握った。そして、頷いた。

「すまなかった、ルイス」
「……お祖父様」
「エリザも、すまない。情けない祖父を許してくれ」

 陛下はそう言い、私達を抱き締めた。
 突如現れ、私達を庇った国王の存在に驚きを隠せないリュスト兵達は、完全に動きを止めていた。

「この城にも、王城にも、逃げ場などありはせん。外に逃げるのだ」
「!! 国王陛下!! 王子、姫!!」

 叫び声が聞こえた。それと同時に、兵に飛び込む黒い影。その手には、普段は懐に隠している剣が握られていた。

「ジンク…!!」

 彼は次々と兵を倒していく。その小さく強い私達の従者を目に映した陛下は、私とルイスの体を押した。そして、笑う。

「いつの日か再び出会えたその時は、もう一度家族になろう。そして願わくば、何者にも傷つけられずに生きておくれ」
「お祖父様!? 何をッ」
「ジンク!! 二人を連れて行けッ!!」
「!! で、ですが陛下」
「『王命』だ! 従えジンク・ハーワード!!!」

 

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