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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season15-2

   

 兵庫県西宮市議員 野村 太地は号泣謝罪会見という失態を世間に晒し、翌日の見出しの一面を飾った。

 そんなとき氷室探偵事務所に依頼が舞い込んできた。

 助手の斉藤が探偵たちに説明する。これも奇遇なことに兵庫県警からの依頼だ。

「女性の変死体を解明してほしい」これが依頼だった。

 へなちょこの謝罪会見を見て、消化不良を引き起こしそうなところにこれはとんでもない依頼だった。さしずめ氷室名探偵があたるところだが、いまは別件に当たっている。

 そこで御影と川上、火守が抜擢された。恋人の斉藤は遠征してしまうことで離れ離れになるこの案件に悲愴していた。

 だが、依頼があれば受けるのが探偵。そして担当になればどこへでもいき、確実に果たす。

 城山温泉付近で女性の死因をしりたい。というのが依頼ではある。

 第一発見者は貸別荘の夫婦だった。川の岩場で発見されたが、とても美人だが司法解剖からしても他殺の線が薄い。

 皆目見当がつかない。身許もわからない。そのせいで行き詰っていた。

 警察としての威信をかけて解けませんでは顔が立たない。そこで氷室探偵事務所にわざわざ依頼してきた。

 探偵三人は、どうあれ兵庫へ出向くことになった。

 

 野村 太地議員、失態。号泣謝罪会見、世間どころが世界へも恥をさらした。日本人として言及。

「見出しがすごいねー」川上が大笑いしている。

「ああ、まったく笑かしてくれるよ、思いだしても笑いがとまらん」火守がめずらしく共感している。

「これで、この議員はおしまいだよな」

「そりゃ、そうだろ。どう考えも不正利用は言い逃れはできないものらしいからな。庶民からはもはや信用たる人物としてみない」

「ていうか」水桐が割って入った。「あの議員、なにいっているかわけわからないけど、聴き直してみたらそれらしいこといってたわよ。西宮市はだれが議員なっても同じって、ならわたしなろうかな」

「すぐに使い込みが発覚して謝罪会見だ」川上がいった。

「いやー、水桐探偵なら逆ギレ会見かもしれないぞ」火守が嘲るようにいった。

「いってくれるわね。とにかく、あんな議員は消えてせいせいするわよ。ムカつく」

 まだ怒っている水桐だった。

「みなさん」斉藤が現れた。火守の彼女であり、助手。「依頼が来てるんですが…」

「おれたちの仕事だ」川上がいった。

「いえ、火守さんのですね」御影は訂正した。斉藤が持ち掛けているからだ。

「ああ、いいよ。やるよ」火守はすぐに応じた。

 だが、斉藤は火守と見つめ合うものの、すぐに視線をそらした。

「ど、どうした…」

「これね、ちょっと人手がいるから、ひとりでは任せられない。小柴さんが承認しているから。もちろん先方の警察も協力するとは思うけど、依頼してきたんだから」斉藤はどこか戸惑っている。

「なんだよ…」

 その場には水桐、川上がいる。雲田は備品の整備をするため、四階にこもっていたがおりてきた。大地はずっとテレビを観ていた。斉藤の話をきいているかは定かではない。

 そこには御影も静かにしていた。めずらしく野村のニュースが気になってか、今朝の新聞を一文字ずつ食い入るように見ていた。

 森谷はまだ出社していなかった。

 斉藤の困惑した顔に注目が集まった。

「えっと…」斉藤は口ごもる。

「はっきりいえよ」火守は妙に苛立った。

「斉藤さん、どうしたの、はやくいって」水桐が背中を押した。

 斉藤は重い口を開いた。「変死体の解明の依頼です」

 全員の目の色が変わった。めずらしいこともある。こんな稀有な依頼はお目にかかれる依頼ではない。しかも担当になるのであれば氷室名探偵が出番だ。なのに、末端の探偵たちに矢が放たれた。

「おれたちにか?」火守がいった。

「たしかに人手はいるが、氷室さんじゃなくか?」川上がいった。

「血沸き肉躍るな、おれも」御影もさっきまで静かにしていたが、急に意識が新たな依頼に驚嘆していた。

「まったく、バカな男たちね」水桐は吐き捨てた。

 雲田と大地はいつもと変わらない顔で斉藤を見ていた。

「氷室さんは警視庁の方でべつの依頼をしている最中で、動けないの」

「動けない? 依頼の内容は?」火守の鼻息が荒れていた。

 斉藤は頷き話す。

「兵庫県警からの依頼です」

 探偵たちは驚いた。関東地方内なら日帰りもできるが、これは宿泊が必須ということになる。

「城山温泉付近で女性の変死体が発見されました」斉藤の説明はつづく。

「どこそれ?」御影は地理に疎いが、川上も火守も水桐も視線をそらした。

「兵庫県の日本海側に近い場所です」斉藤が答えた。

 御影はまだ見当もつかなかった。

 斉藤はつづける。「第一発見者は近くの貸別荘の管理者の夫婦が車で移動中に偶然発見したそうです。川の岩場にひっかかっていたと…」

「被害者は?」川上が急かした。

「身許は不明、推定年齢は20代~30代…、痩身で、私が見る限り容姿端麗で美人なひと。外傷はなく、なぜ、そんなところで死んでいるのか不明。司法解剖からみても外傷や毒物、心臓発作など、とくにこれといった致命的な死因はなにもないとのことです」

 探偵たちはだれも口を開かなかった。

「みなさん、だいじょうぶ?」無反応な探偵たちに斉藤は懸念をおぼえた。

「どういうことだ…」火守は頭を悩ました。

「どうせ、男絡みなんじゃないの」水桐が関心なさそうにいった。

「浮気とか、恋人との喧嘩とか怨恨、そういうこと?」川上がいった。

「ときに女が殺される理由なんて逆上の果てに、力で敵わない男の突発的な逆襲によるものでしょ」

 水桐の推察は合点がいった。

「たしかに、そうだな」火守がいった。

「男絡みなら、そうだけど…、実際そうだとしたら、なんだいったい…」川上は天をみあげて両手で目を押さえて考えていた。

「でも、この恰好からして妙だな」御影は疑問に気づいた。

「どうした?」火守はいった。

「ワイシャツにジーパンスタイル、クロッカスのサンダル。所持品はキーケースか…」御影はつぶやいた。すると探偵たちもハッと気づいたように目を見開いた。「2月上旬に外出する恰好ではないと思いますね」

「ということは室内で殺されて、川に落とした…」川上がひらめいた。

「ちがいます」御影はすぐに否定した。

「んだ、おまえ」

「そうか」火守が浮かんだ。「車で移動していた。車中で殺し、橋から投げ捨てた」

「おれも同じ見解です」御影はいった。「そして死因は…」

「わかるのか?」川上がいった。

 御影は微笑んだ。

 

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