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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第13話 時を待ちし臣下

   2016年9月26日  

(第二章開幕)
二人が身を寄せたのはとある町。そして、レイシーはそこで初めて出会うこととなる。ルイスに仕えるという謎の臣下達に。

『彼等の傷を全て私が受けていれば、今も兄様と共に生きていてくれたでしょうか…?』

『アストラジルド〜亡国を継ぐ者〜』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、来たるべき時の為に。

 

 
 そして、私達は城から逃亡した。その後、ジンクやミッシェルがどうなったのか、知る術はない。

 ミッシェルの用意してくれた車は、門のすぐ傍に隠されていた。ルイスがそのエンジンをかけて走り出してから、今日で三日が経つ。時が経つのは早かった。私の心は未だ、あの城に取り残されたままなのに、体はその時間の流れを確実に刻んでいた。

「エリザ」
「…………」
「着いたよ」
「……え?」
「しばらくここで過ごそう」

 そう言ってルイスは車を止めた。そして、先に車から降りると、私の体を抱えて、降ろしてくれた。
私は目を見開いて、そこに広がっていた風景を見つめた。
————衝撃だった。今まで城から一歩も外に出たことのない私にとっては、空気すら違って感じた。緑と共存し、人々が賑わう。私の眼下には、初めて見る————『町の風景』が広がっていた。

「こ、ここは?」

 ルイスは私を抱えたまま、車を置いて歩き出した。彼は私にゆっくりと微笑んで、こう言った。

「僕達は今、身を隠さなければいけない。だから…協力者に会う。お前の初お披露目だ」

***

 やがて、町に辿り着いた。私はくるくると辺りを見回しては、ルイスの体にしがみついた。
 町、と言うものは、これほどまでに騒がしく、活気に溢れている場所なのか。城の静けさとは大違いだ。
 人々は笑い、そして怒りながら、また笑う。老人、子供。たくさんの人間がこの場所に集まっている。なんて————明るいところなのだろう。

「多分この辺りだとは思うんだけれど……少しの間、待っていられるかい?」
「うん、大丈夫」

 私を地面に降ろすと、ルイスは路地に入っていった。そして、すぐに私の傍へ戻って来て、私の手を引き、その路地へと足を進めた。
 建物と建物が密集し合っているこの場所は、恐らく市場と言うところだろうか。路地はその建物の間を縫うようにして、幾つも存在しているようだ。狭く、薄暗いそこは、町とは空気が違う。

「着いた着いた。ここだ」
「…?」

 ルイスが足を止めたのは、木製の扉の前だった。路地のすぐ真横にあるそれは、建物内の倉庫への入口のようにも見えるが、それにしてはあまりにも存在感がない。誰も使っていないようにも思える。そもそもその向こうに、空間が広がっているのかも謎だ。
 だが、ルイスは迷いなくその扉に拳を当てた。そして、妙なリズムで叩き始めた。すると、すぐに扉に隙間が生まれた。向こう側から開いたようだ。それを見て、ルイスは口元に笑みを浮かべると、扉を指で指し示めし、再び私を抱きかかえた。

「さ、入ろう」
「…………」

 隙間へ足を入れ込み、ルイスはその中へ身を入れ込んだ。その瞬間、目に入ってきたのは、だった。けれど、先程のものとは違う。鉄か何かの金属で出来たその扉は、外からの侵入を頑なに拒んでいるように見える。
 その扉の前でも、ルイスはまた拳を当てて、扉を叩いた。最初の扉とは僅かにリズムが違った。

「兄様…大丈夫なの?」
「ああ…驚いた? でもこれからもっと驚くと思うよ」
「え?」

 そうルイスが悪戯っぽく笑った次の瞬間、鉄の扉が開かれた。そして、向こう側から現れたのは、一人の男。身なりは町の者とそう変わらない一般的な装いのように見える。だが、その手に握られていたのは、『』。私は息を呑んだ。
 

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