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ラブストーリー

輪廻転生ヒーロー 第1話「雨と桜が視界を満たす」

   2016年9月28日  

――災悪の降り注いだ世界を救い、<英雄の少女>人峰灯火はその後、少年の前から姿を消した――

青春×純愛の現代ファンタジー
『輪廻転生ヒーロー』
【毎月 第4水曜日に更新】

「髪が、伸びたんだね」

 

 
 口を大きく開けて息を吸うと、湿った空気が肺を満たしていった。空気が重苦しく感じる。

 僕は首元のネクタイを緩めて、曇空を眺めると、ゆっくりと空に向かって手を伸ばしてみた。

「…雨、降りそうだなぁ」

 そう呟いて、僕は朝の静かな町並みを眺めた。崖沿いに建っているこの神社のベンチは、僕の特等席だ。何せこのやしろはとうの昔に廃れていて、最早今となっては僕ぐらいしか訪れない。静かなここで過ごす時間は好きだけれど、あまりゆっくりしていてはしてしまう。
 僕は鞄を背負い、境内を一度見つめてから、古びた鳥居をくぐり抜けた。
 ――――僕は今日からまた、『』を探して生きていく。

「あーおーい!! 新学期だな!!」
「……あー……出た」

 僕は立ち止まって、鞄を構える。そして、タイミングを見計らい、それをぐるんと振り回した。それと同時に確かな手応え。

「グハッ……!!」

 気持ちの悪い呻き声と共に鞄に伝わる衝撃。勢いよく倒れた男を僕は呆れて見つめた。

「てめぇ!! いきなり何すんだよ!!!」
「そっちがいきなり声かけるからでしょ……」
「お前俺に容赦ねぇよな…ほんと」
「というか、何でまだこんなところにいるの? 入学式間に合わないんじゃない?」
「ああ? んなもん余裕だ余裕」

 曇り空の下でもわかる鮮やかな金髪と、頭が悪いわりに顔は整っているのが、一層僕の不機嫌を煽る。髪色によく映える水色のパーカーのフードを掴み、彼を立ち上がらせると、すぐに手を離した。そんな僕をにやけた顔で見つめるこの男――――不本意ながら僕の親友だ。

「お前こそ間に合うのかよ? 新入生くーん」
「僕は元から遅く行くつもりだったし、いいの」
「『先生』の前でよくもまあ、堂々と宣言出来るな、お前は」
「? ああ、そっか。今日から僕の担任だっけ? 雄大さん」

 鼻高々に仁王立ちするこの男の名前は、高柳たかやなぎ雄大ゆうだい。二十五歳にしては若干童顔な顔立ちと軽薄な金髪のせいで、よく学生に間違われているが、彼は僕が今日から通う三岬みさき高校の教師で、僕のクラスの担任だ。

「雄大さんさぁ、いい加減ストーカーやめてよ」
「はあ!? ストーカーじゃねぇよ! 待ち伏せだ!!」
「うん。それをやめてほしいんだけど」
「……つーか、さ。お前――――、続けんの?」

 その真剣な眼差しに、僕は笑顔でこう答える。

「うん、もちろん。いつか必ず、あの子はこの町に現れる」

 

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