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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season15-5

   

 聴きこみを開始する一行。女性が車中内で無抵抗のまま橋から落とされた。

 この仮説がただしければ同乗者がいる。その人物の目撃情報を掴もうと、御影たちは動き出す。

 そして女性の遺体が発見された川を見ながら、御影は思考を働かせていた。プライベート・アイによって見えないものが見えようとしている。

 第一発見者に刑事は女性を見たことがあるか、とたずねるだけだろう。しかし、探偵たちにはあるひとつの質問をしなければならない。

 御影の手には、二枚の写真が握られている。もうひとりの尋ね人がいるのだ。

 貸別荘の夫婦のところへ赴いた。今夜はカレーらしい。探偵の嗅覚が感知した。

 ひとつの質問をする。御影が握っていた二枚の写真。ひとりは遺体となった女性。

 そしてもうひとりが重要だった。

 まさかと思ったが、やはり目撃されていた。探偵たちはにらんだとおりの結果に満足した。

 

 御影たちも黒羽警部たちと同様に聴きこみ調査を開始した。

「人海戦術のいる聴きこみは警官、刑事の十八番。おれたちがやらなくても…」川上はふてくされていた。

「それでも女性のことをどこかで見たというひとがいるかもしれない。そしたらこっちのもんだ。なにかしろの手掛かりになるし、同伴者の影でもいればなおよしだな」火守がいった。

 御影はプライベート・アイが発動していた。そしてどこか遠目でなにかを見据えていた。

「どうした?」火守が声をかけた。

「いえ、川に落とされたとなれば、川の流れで沈んだ可能性が高い。そうなったら目撃者の数なんて、遺体を発見するのは困難。その女性の連れというのを見たひとなんていないかもしれない。可能性は途方もなくすくないと思って」

「まぁな、だがそんなつもりでおれたちは動いていない。警官ははずれクジを引かされて無意味なところまで探っているとは思うけどな」火守はいった。

「人気の多いところ行こうぜ、温泉付近が妥当だ」川上がいった。

「そういえば、第一発見者ってだれでしたっけ」御影はおもむろにいったが、探偵ふたりはなにをいわんとしているか、察した。

「なるほどな」火守はにやりとした。「おれたちが探している人物には心当たりがあるか…」

「ええ、刑事の質問は“この女性を見たことはあるか”だからな。質問の仕方では本人も気づいていない」川上がいった。

「そうですね、おれたちはその質問をしなければならない。たったひとつの質問です。女性の写真での目撃情報は伏線のようなもので」御影の手には二枚の写真が握られていた。

 川上が携帯電話で黒羽刑事に訊ねた。第一発見者の所在地。「この現場からすぐです。車で15分くらいで着く場所らしい」

「そうか、なら行こう。もとより、その人物はそうとうなキーマンだと思うがな。雲田さんのメールの内容からして」火守はいった。

「はい、そう思います」御影はいった。

 城山温泉の付近には貸別荘がある。そこの管理している夫婦が第一発見者だ。

「こんにちは」もう薄暗くなってきた。探偵三人はすぐに貸別荘の管理者である夫婦の自宅に近づいたときに気づいた。

「はい」夫らしき人物がでてきた。

「わたしたちは豊岡北警察署の黒羽警部から依頼を受けて調査をしています、東京から来た氷室探偵事務所の火守といいます。こっちは川上で、こっちは御影といいます」

 軽く会釈した。

「はぁ、どうも、また発見時の話ですか?」夫は深い息を吐いた。何度も兵庫県警から聴取をうけたのだろう。

「まぁそうですね。ですがひとつまだ聴いてないことがありまして」火守はいった。

「夕食時にすみません」川上の嗅覚はすぐに感じとった。今夜はカレーだと。御影も火守も気づいていた。

「いえ、べつに」夫は答えた。

「今夜はカレーですか?」御影は下品にもきいていた。

「ええ、ですが妻のカレーはスパイスが効きすぎて辛いんですよね。だから中辛で作っておきながら、途中で半分取り分けたのを辛口用にするんです。汗だくになって辛いものを食べるもので…」夫は冷や汗をかいていた。

「寒いですから温かいのはいいですよ」御影はいった。

「それがほんとうに辛いんですよ、しゃれではなく、しかもその辛口を出されてしまうから、中辛用のカレーを食べても味がしなくて」夫は苦笑していた。

「ああ、なるほど、わかる」三人も同感だった。体験したことがある。

 激辛のカレーを食べたあとで、普通のカレーを食べても、味覚は麻痺してしまうのだ。

 御影は思った。まるで今回の事件のようだと。

 

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