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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第15話 それが私の幸せだった

   

自分の存在と考えに疑問を抱くレイシー。時々彼女を襲う『眩暈』は、一体何なのか。一体、ルイスは何者なのか。王女の心は、未だあの城の中に――――。

『どんなに寂しくとも、悔しくとも、怖くとも、それが私の世界だったのだ』

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
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それは、来たるべき時の為に。

 

 
 私が焦ってルイスを見上げると、二人は互いの顔を見合わせてから、柔らかく笑った。

「姫様。お初にお目にかかります。私はプラインと申します」
「オールと申します。俺達は両殿下に生まれながらにお仕えする臣下でございます」
「臣下には真名を教えてある。僕に仕える民に、は必要ない」

 ルイスはそう言って、彼等を指し示した。

「彼等には頭領のルドウと共にここを任せている。表向きは宿屋としてね」
「? 宿屋?」

 ここは、地下空間だったらしい。一階から上は宿屋として動かしているのだろう。だからここには、日の光ではなく、電気による人工的な灯りが満たされているのだ。

「ルイスが、あなた達に真名を教えているということは、それほどまでに信頼を置いているということですね」
「? 姫?」

 私は車椅子から立ち上がった。次の瞬間、鋭い痛みが足に走る。だが、それを顔に出すことなく、私は彼等に目を向けた。そして、足を交差させて礼をする。

「ならば、私があなた達を警戒する理由はありません」

 私は人を疑うばかりでいたくない。覚悟を、そして決意をしなければ何も知ることは出来ないのだから。

「先程の無礼をどうかお許しに」
「レイシー、足が」
「…………」

 止めようとしたルイスの顔を私は無言で見上げる。彼は、もうそれ以上、何も言うことなく、見守り始めた。

「――――私は、初めて城の外に出ました。それ故この町やあなた達夫婦のことも、何も知りません。もちろん、ルドウやピクシス先生のことも。だから教えて下さい」
「姫様!!」
「! きゃっ」

 突然、オールとプラインがその場に崩れるようにして膝を突いた。私は驚いて身を引く。彼等は頭を上げることもせず、ただ背中を震わせていた。

「姫にお会いできる日を心待ちにしていたのです。ですから、そのような…無礼などと申されないで下さいませ!」
「姫!」
「…………」

 やはり、気になる。この反応は、先程もルドウが私に見せていた。改めて見ると、過剰だ。

「……あなた達もルドウも、どうしてそこまで私に敬意を示すの?」
「“ずっと――――を待っておりました”」
「?」

 どういう意味だろうか。

「とにかく、立って下さい」
「その前にお前が座りなさい」
「わっ」

 ルイスによって車椅子に座らされた。そんな私を見て、二人はゆっくりと立ち上がった。そして、顔つきを変えた。

「姫、一つお伺いしてもよろしいですか」
「ええ、どうぞ」
「――――何故、私達が『夫婦』だとお気づきに?」
「?」
「あっ、そう言えば」
「王子はお話になられていないのに、何故姫がご存知に?」

 オールがそう言うと、ルイスとルドウまでもが目を見開き、私を見つめてそう言った。そこまで注目を受けることでもないと思うが。
 私は首を傾げて、彼等へ目を向ける。

「あなた達の纏う空気が、他の男女とは違う気がして…それで」
「恐れながら、姫。今しがた、“初めて城の外に出た”と申されましたね」
「ええ」
「では何故――――男女が纏う空気をご存知なのですか?」
「!!」

 

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