幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season15-6

   

 火守が新情報を前日に黒羽警部に報告したため、翌日の朝から刑事たちを集合させて会議がはじまった。

 その報告について、伊根や昨夜世話になった咲下は驚愕していた。

 御影が握っていた女性ともうひとりの人物について。刑事のだれもが驚きを隠せなかった。

 まさかメディアのせいで肝心な事件が報じられていない、いや隠れてしまったとは思いもよらなかった。

 女性と交際してこの地に訪れていたのは、最近世間をにぎわした滑稽で号泣という間抜けな男。

“野村議員”だった。

 政務活動費の領収書の中に、城山温泉に逗留していた架空領収書があった。

 謝罪会見でもそのことは述べていた。もっともなにをいっているか少々、難をきたしていたが。

 城山温泉付近の監視カメラを調べたら野村が車を運転する映像が確認された。

 そして、咲下はひとつ疑問に思う。なぜ、野村は謝罪会見なんてしたのか。

 それは探偵たちも思っていたことだ。

 

 翌日、警部たちからそうそうに呼び出しをくらった。

「事件の情報を整理します。探偵さんたちがきてくれてよかった。まさかの着眼点であぶりだしてくれた」黒羽警部の目が見開いていた。

 伊根や咲下は驚いていた。

「第一発見者の夫婦はある人物を三日前に見ていると証言した」比野宮刑事がつづけて話した。

「それは遺体の女性ではなくてですか?」咲下がきいた。

「ちがう」比野宮が答えた。

「じゃぁ、だれです?」べつの刑事がきいた。

「女性と交際していたと思われる人物です」御影はいった。

 そんなやつがいたのかよ、だからだれ、と野次の声が低空で走っていた。

 探偵三人はほくそ笑んでいた。

「説明しろよ探偵さんよ」伊根が噛みついた。

「ええ、そうですね」火守がいった。「さいしょはわたしたちの仲間で東京にいる雲田という探偵から報告を受けたことです。わたしたちのサポートをしてもらっています。情報は武器になるので、調査であちこちと動いているときに知り得ていないことをつねに報告してもらってます。だから真新しい情報を漏らすことはない」

「そこで」川上がつづけた。「メディアのせいでわれわれは大事な情報を漏らしていたことに気づいた…」

「なんだってんだ?」伊根がにらみつけていた。

「けさもテレビのニュースで流れていたが」火守が話しをつづけた。「ご存知のとおり世間をにぎわしている男がいる。まったくもって世間というより世界に日本人とは、というマイナスなイメージを崩してくれた情けない男…」

 刑事たちの顔色が変わった。さすがに察しがついたようだ。

「おい、まさか!」伊根が声を荒げた。

「はい、野村議員です。謝罪会見で号泣して恥をさらした愚者です」火守は容赦なくこの県の政治家を罵った。

 刑事たちは言葉を失っていた。

 あれだけの恥さらしが、ひとを殺したというのか、信じられない。滑稽で笑いものになっている40代の大人の男が、そんな真似ができるものだろうか。刑事たちは困惑していた。

「根拠は?」伊根が突っかかる。

「黒羽警部が認めているのに、根拠を話す必要があるか?」川上が跳ね返した。

 伊根は黒羽警部を見た。

 口を真一文字に結び、頷いていた。根拠という以上に確証がある。といっている顔だった。

 伊根は押し黙った。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
-, , , ,


コメントを残す

おすすめ作品