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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season15-7

   

 野村議員の秘書である菊川に刑事が立ちはだかる。

 伊根はどんな相手だろうと警察バッチを盾にぶっきらぼうに振り翳す。

 警察署で事情聴取される菊川。

 政治家として警察と対面することないよう努めていこうと菊川の胸にはあった。

 野村について知りたい。刑事の意図に少なからずほっとした。だが、なにもいえることはないと。

 引きこもりでゲームをするような稚拙な男と揶揄する。そして、まさか議員になれるなんて、とさらに見下す発言を菊川はする。

 そこにはある人物の影響が背景にいるという。

 多部議員。大物政治家で兵庫県では支持されている有名な政治家だった。

 そして菊川は興味の惹くことをいった。

 多部の娘と野村が婚約前提で交際していると。

 御影がいったひと言が思いだされた。二股していることを見抜いていた。

 そして伊根は菊川にある提案を強要するのだ。

 

 伊根が菊川を見つけ眼前に立ちはだかる。

「菊川さんだな、野村議員の秘書の?」ぶっきらぼうににらみつけながらいった。

「えっ、警察? べつにわたしは政務活動費に手をつけてないですけど」野村議員の秘書だからおこぼれを頂戴している、と疑われたのかもしれないと思った。

「ああん! ちがうよ。ちょっとあんたに聴きたいことがある。署にきてもらおう」伊根はほかの刑事三人ほど連れていたが、そいつらに目くばせさせ菊川を任意で連行した。

「菊川 雅樹(きくかわ まさき)、33歳。野村議員の秘書…」伊根とほかの刑事が三人で聴取している。

「はい」菊川は警察の厄介にだけはならないように政治家になったとしても過ちを犯すまいと心がけていた。

「あんた、野村の行動について話してもらおう」刑事がいった。

 向かい合う刑事と菊川。菊川の背後で腕を組み直立している伊根は黙って見下ろしていた。

「どうしてですか?」

「こっちの質問に答えなさい」刑事は唇を固く結んで威圧感を与えていた。

「ここ一週間ほどで彼の行動に不可解な面はなかったか?」ほかの刑事がいった。

「いえ、べつに…、いつもどおりだったと思います。どのみち行ってないのに行ったって言い張っているようなひとですよ。それで不正受給を請求しているようなひとですよ」菊川はマスコミで公表されたことと同じことをいった。

「城山温泉に単独で向かったことはないか?」

「議員がですか、それはないでしょう。あまり遠出するようなタイプじゃなく、暇なら部屋でゲームでもしている稚拙な男ですよ。泣きついて議員になったようなひとです」菊川は悪口をいった。

「やけに見下しているな」背後に伊根が言葉を挟んだ。

 菊川は振り向いて答えた。「ええ、それはまぁ、じっさい言っちゃわるいけど、まさか議員になれるなんて思ってもみなかった。すべてはあのひとのおかげだ」

 刑事が反応をした。「あのひと?」

「おい、だれのことだ?」

「野村議員の支援者といってもいいひとですよ。なんども議員選挙に落選つづきで、見かねてなんとか票を得られるように根回ししてた。みんな忘れていたけど、刑事さんたちに聞かれて思いだしたけど、あのひとがいなければ野村は政治家にはなれなかった。まちがいなくね」菊川は嘲笑するように鼻で笑った。

「それで、野村の後ろにだれかいたんだな?」菊川の向かい合う刑事がいった。

「ええ、野村が議員になってからは気配を消して議長なんて座についている」

 刑事たちは察しがついた。

「多部 準一か」べつの刑事がいった。

 この県で、議長に位置する大物議員として有名だった。

「大物だな。政治世界では中堅かもしれないが、人脈があり頼られている存在。庶民からも支持されている。もっぱら次期総理の器なんて言われている」ほかの刑事がいった。

 菊川はほくそ笑んだ。

「なにがおかしい」伊根が菊川のようすを背後からみて指摘した。

「それだけじゃない。その多部さんの娘と婚約前提で付き合うことがひと月前に決まった」菊川はいった。「そうとう浮かれていたな、あの男…」

 伊根の顔色が変わった。「おい、それって…」

 向かいにいる刑事と目があった。写真を見せることに同意した。

「この女か?」写真をデスクに滑らせるように菊川に見せた。

 じっと見た。菊川の眉が動いた。ゆっくりと顔をあげて眼前の刑事をにらんだ。「だれこれ…」

「この女じゃないんだな?」

「しらね」

 もとより名前はわかっていた。だが顔はいちおう確かめさせた。菊川が勘違いしている可能性だってある。

 野村が菊川に紹介したのであれば名前を偽らせているとも考えられる。

 取調室のマジックミラー越しで見据えている探偵たちが、指示していた。

「伊根刑事しっかりと引きだした。やるねぇ」火守はいった。

「だが、これでわかった。川で遺体が発見された女性は、多部の娘ではない」黒羽警部はいった。

“それはいたって単純なこと”。御影がいったことが思いだされる。

「野村のやつ、二股か」川上が呆れ果てていた。

「最低のクズめ」

 男たちは顔をそむけた。

 まさかの咲下刑事が罵った。

 

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