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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第16話 眠ったら、朝が来る

   

あの燃え盛る炎の中に、未だ心を置き去りにしているレイシー。彼女は、消えた大切な者達を思い出しては、己を責め続けていた。

『大切な人が、皆いなくなってしまったこの現状が――――それが全て夢ならば、どんなにいいか』

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、来たるべき時の為に。

 

 
 私の生きていた世界。それはとても小さくて、脆かった。
 だが、そこにあった思い出と大切な人達の生きた証は、計り知れないほどに巨大だ。私一人では抱えきれないぐらい。奪われたままなんて、許せない。このまま、終わるなんて嫌だ。
 それでも、私にはまだ、抗うだけの力がない。震えも収まらない私では、まだ歩き出せない。心がまだ――――あの燃え盛る城の中から抜け出せない。

「私には、ルイスしかいない。彼がいれば、そこが私の居場所になる」

 だが、それすらも、私の運命は許してくれないのだろうか。
 私は、どう在るべきなのだろう。

「……私は、これからは自分の力でルイスの隣に立てるようになりたい。幼いままでいたくないの。守られてばかりで、何も出来ない自分も嫌。だから、プライン。教えて下さい。私の兄は――――“一体何者なの”? あなた達は何なの?」
「…………」

 私は真っ直ぐに彼女を見上げて、拳を握った。プラインは、私のその問いを聞いて、動かしていた手を止めた。そして、目を瞑る。雰囲気が変わったように感じた。

「どうか『来たる時』まで、お待ち下さい。その時が来れば、全てがになります」
「来たる時――――?」

 それは確か、ルイスもルドウに言っていた。来たる時とは、一体何のことだ。
 疑問でいっぱいになった私の視線から逃れるようにして、素早く着替えを済ませたプラインは、最後に私の髪を整えると、車椅子の背を押した。

「? プライン?」
「では姫、お召し替えも済んだことですし、今日はもうお休みになられて下さいませ!」
「っ」

 私の質問には答えられない、と言う意味だろうか。
 話を逸らした彼女に頷き、私は俯いた。

「着替えさせてくれてありがとう。プライン」
「とんでもございません」

 まだ、時間はたくさんある。知らなくてはいけないことも同じようにたくさんあるけれど、それもいつかきっと、果たされるだろう。私はもう、逃げてばかりの王女ではいられないのだから。

「王子! もう終わりましたよ」
「レイシー!!」

 凄い勢いで部屋に入ってきたルイスは、私を見て動きを止めた。

「か、可愛い…何でだ…普通の服なのに…可愛い…」
「やめて…」

 私の頬を両手で包み込んで笑う彼を見て、私は唇を尖らせた。あんなことがあっても、その温もりは変わらない。

「王子、話は明朝に致しましょう」
「? 何?」
「姫もあなた様も相当疲労しきっておられます」

 ルドウがそう言って、頭を下げた。

「本日はもうお休み下さい。私共は、王子と姫に安心して眠って頂きたいのです」
「「…………」」

 その言葉に私とルイスは顔を見合わせた。
 
「お守り致します。ですからどうか、両殿下… “お心”を休ませて下さい」

 ここ、ろ――――。

 私はその言葉に頷いて、ルイスの手を握った。すると、彼も同じように握り返してきた。

 

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