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ラブストーリー

恋する僕ら-約束のしかた<1>

   

淡くほんわかとしたお話をどうぞ。
ももと理沙の、心温まる物語を贈ります。

***抜粋***

「食べたなー?」
「うん?」
 理沙の呟きの意味がわからなくて、僕はもぐもぐを止めない。理沙の少し赤らんだ頬がにんまりと笑みを浮かべた。
「三倍返し、よろしくな?」
「へ? 三倍?」
 理沙が勝ち誇った顔をしていて、僕は負け誇りながらスナック菓子と理沙を見比べる。理沙の胸に居るミニもも人形が、僕本人の意思を汲み取るかのように首を傾げた。

******

 

 朝。
 起きてすぐに部屋の窓を開けてみたら、空はとても晴れていて、昨日までの雨が嘘みたいだった。そんな天気が嬉しかった。
 早起きした理由はそれだけじゃなくて。
 目が早く覚めたのは今日という日にうきうきしてしまったせいで、そんな気持ちは決して、晴れた事に対してじゃなくて。
 今日が文化祭だからというのもあったけれど、それだけじゃなくて。

 僕が嬉しくなったのはきっと、晴れを待ち望むあの子の笑顔が見られると思ったから。
 部屋の窓から見える青空に白い雲。温かい朝日の光に瞼を細めながら、少し偉そうに胸を張るあの子の事を考えたら、自然と笑みが零れた。

○○○

「いらっしゃいませー。らっしゃいませー」
「焼きそば安いっすよー」
「人形投げはいかがっすかー」

 空はすっきり青空で、真っ白い雲が綿菓子みたいにふよふよと浮かんでいた。
 今日は待ちに待った文化祭。
 この日の為にバイトを休み、準備に勤しみ勉強をおろそかにした生徒は数知れない。勉強はもしかしたら、文化祭に関係なくしてないかもしれないけれど。
 校舎の三階にある窓から外を眺めつつ、そんな感想を抱いて僕は苦笑した。

「おおおぃ! ソース足りないぞ! ちょっとコンビニ行って買ってこいって!」
「服安いですよぉっ! サイズいろいろ! どうぞ見てって下さいなー」

 ぎし。大きく開かれた窓に肘を置いて、僕は真下に広がる人の群れを眺め見る。上から眺めているとよく分かる。かなり、煩い。

「おい、そのたこ焼き小さくないか?」
「あのなあ。たこ焼きの大きさはどれも一緒だっての」

 校門から校舎に続く上り坂の両側には仮設屋台が並んでいて、体操服の上にエプロンをして料理に勤しむ生徒や、それを見守る(監視役)の先生が買い出しをしに行くなどと右往左往していた。焼きそば屋台、たこ焼き屋台、たい焼きに、人形屋(人形を投げて針金のわっかを通せばその人形が貰えるというゲームなど)や服屋なんてものもある、高校生の文化祭にしてはいろいろと多彩な出店があった。
 服飾科や家庭科、美術科なんていう専門科で構成されたこの学校ならではの風物詩だと語ってくれた担任のオバセン(おばさんじゃない)は、今頃は絵画展の受付で欠伸をしているに違いない。絵を見る学生って少ないし。一般客なら来るかな。どちらにしてもお客さんは少ないと思う。
 とはいえ展示してある絵の中には僕の描いた作品もあって、誰かが評価をして点数を付けてくれたりもするからそれなりの緊張もある。まあ、大して上手くはないけれど。絵は好きな方。将来は画家になれなくても、それらしい仕事に就きたいなあ、なんて思っている割と普通な学生の一人。
 それにしても、と顔を持ち上げて空を見た。朝起きてからずっと晴れ晴れとした晴天は、清々しくて嬉しいけれどちょっと暑い。
 とはいえ雨よりはマシで、とにかく晴れてよかったと思う。そんな風に賑やかに、そして華やかに文化祭が過ぎていく。
 お昼前の午後二時過ぎ。
「後で何か、買ってこようかな」
 僕はそんな喧騒から少し離れた場所で、お客さん的な言葉を漏らした。

 

-ラブストーリー


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