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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第17話 プランジットの町

   2016年10月11日  

レイシーは、プラインと共に町に出た。そこで目に映した町の人々の暮らしに、彼女はただただ憧れた。
(本編2P+第一章関係者人物まとめ)

『私には――――勿体ない』

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、来たるべき時の為に。

 

 

***

「エリザ、起きて。エリザ」
「……ん――――……あ、おはよう…兄様」

 私は寝ぼけ眼で手を動かし、自分の頬に触れた。彼は私の髪を撫ででいた手を止めて、優しく笑うと、ベッドの上から降りた。その目の下に隈はない。どうやら昨夜はよく眠れたようだ。安心した私は小さく笑う。

「おはよう。ははっ、ごめん起こしちゃった」
「変ね、ふふっ。一体どうして?」
「……お前の声が聞きたくなって」

 首を傾げた私に、彼は甘えるようにそう言って、頬に手を伸ばしてきた。
 こうしていると、あの城での当たり前を思い出す。それは、いつもの朝のようで切ない。それはルイスも同じ思いなのかもしれない。眉を寄せたままの彼を見て、私はゆっくりと体を起こした。

「ルドウ達と現状整理をするんでしょう? 昨日、明朝って言ってたよね。……急がなきゃ」

 そう言い、髪を整えようとした私を、彼は止める。

「それなんだけれど、お前には先に行って来てほしいところがあるんだ」
「? 行って来てほしいところ?」

 首を傾げたその瞬間、扉をノックする音が聞こえた。

「はい、どうぞ」
「王子、姫。おはようございます」
「! プライン」
「はい、姫」

 短い髪を揺らした女を見て、私は小さく手を振った。すると、彼女は扉の付近に置いておいた車椅子を私が座るベッドの傍まで持ってきて、微笑んだ。

「では、早速ではありますが、参りましょう」
「えっ…?」

 こんなに朝早くから、一体どこへ? それよりも、出歩いて万が一、王国兵と遭遇なんてしてしまったら大事おおごとになる。
 戸惑った私の肩をプラインが支えて、車椅子へと座らせた。

「どうなさいました?」
「ま、待って。私達は身を隠していた方がよいのでは? もしも、兵と出くわしたら……」
「姫。恐れながら、これは王子のご命令でございます」

 何だと――――?

「兄様…?」

 一体どういう――――。

「現状と今後について話し合いをする前に、お前にこの町を知ってもらいたくてね。今後暫くはこの町を僕達の活動拠点とする。もしもの非常事態の為にこの町の地理を知っていた方がいいだろう?」
「…………」

 それはそうだけれども。何故、プラインと二人きりで行かせるのだ。私のいない場で、臣下と話したいことでもあるのだろうか。

「兄様は、一緒には行かないの?」
「僕は残ってやることがあるんだ。ごめん」
「…………」

 少し違和感を覚えたけれど、私はその言葉に頷いた。少しはルイスにも休んでほしい。だが、そうもいかないのだろう。
 私自身、この町のことをもっと知りたいとも思っていたし、これは好都合なのかもしれない。

「プライン。妹を頼んだ。何かあったらすぐに戻れ。いいな?」
「ええ、王子。ご心配なされずとも、このプラインがあなた様の姫をお守り致します」
「では、兄様。行ってきます」

 そう言い、手を振った私を、ルイスは微笑みながら見送った。その表情に“不安”を感じたのは、一体何故だろうか――――。

 

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