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エリカの花言葉 第3話 ニチニチソウ《若い友情》 1

   2016年10月12日  

 夏休みに入り洋平と恵里香が弘行の家を訪れた。そこで悪漢の父と出会うと、二人は弘行のことを不憫に思う。
 その家庭環境を目の当たりにした洋平は、小学生の時に児童養護施設へ送られた級友のことを思い出し、弘行も同じようになるのではないかと思い始めた。

 

 夏休みに入ると、学校へ行くことは部活動かプール授業くらいになる。
 プール授業とは、学年ごとに夏休みの間、曜日交代で一時間ほど行う体育の授業だが、授業と言っても夏休み中に最低三回は出席すれば良いものであり、暑さ紛らわしの水遊びのようなもの。沢山出席すれば体育の評価にはなるから、毎回のように出席する者もいるが、塾の夏期講習や、部活動を優先して三回しか来ない者もいる。
 夏休みといっても、陽射しは眩しくて暑いが、まだアブラゼミの鳴き声が町中に鳴り響くほどは聞こえず、お盆の時期までは旅行や田舎に行く者も少ないので、プール授業の出席率も高い。
 洋平は心臓の定期検査の為に皆よりも早く休みに入ったことから、退院すると補修授業の為に学校へ通っていた。
 補修が終わり帰宅しようとして下駄箱で靴を履き替えていると、離校舎の方から女子の笑い声が聞こえる。
「あっ、ヨウちゃん。これからプール?」
 三人の女子が下駄箱の前を通り過ぎようとした時、その中に恵里香がいた。
 夏服姿にタオルを首に掛け、湿った恵里香の髪が、太陽の陽射しによりエナメルのように光る。
「いや、僕はプールに入れないから」
 心臓の弱い洋平がプールに入れないのは以前に聞いた話にもかかわらず、問い掛けた言葉に恵里香はハッとする。
「あ、そうだよね……じゃあ、もう帰り?それなら、かき氷食べに行こうよ。ちょっと待って」
 
 洋平は下駄箱の前で五分ほど待っていると、『タタタタタ』と勢い良く階段を駆け下りる音が聞こえる。
「ゴメン、ゴメン」と言いながら恵里香が戻ってくると、二人は学校の裏にある駄菓子屋へ向かった。
 その駄菓子屋では夏になるとかき氷が売り出され、イチゴ、メロン、レモン、ブルーハワイなどの種類がある。洋平はメロン、恵里香はブルーハワイを選び、かき氷を受け取ると、恵里香は「ヨウちゃん、ありがとう」といってその場を離れた。
「おい、奢るなんて言ってないぞ!」とは言いながらも、洋平は二つ分の代金を支払う。店前のベンチに腰を掛けて、美味しそうにかき氷を食べている恵里香を見つけると、洋平は不貞腐れた態度で平手を差し出した。
「おい、かき氷のお金払えよ」まるで、無銭飲食をした客を捕まえた店主のように洋平は話す。
「いいじゃん、かき氷くらい。男のくせにケチだなぁ」皮肉を言いながら出した恵里香の舌が、シロップで少し青くなっている。
「子役で沢山お金稼いだだろ、本当ならエリカが奢れよ」
「女の子に奢れって?小さい男ねぇ。それに、私がそんな大金を持っているわけないでしょ。そんなお金を子供に預ける親が何処にいるのよ」恵里香は黙々とかき氷を口に運ぶと、洋平は溜息を吐いて隣に座った。
「そういえば、ヒロ君元気?夏休み入ってから会ってないや」
「昨日、一緒に銭湯行った。普通にしているよ」
「ねぇ、今からヒロ君の家に行ってみようよ」 
 きっと弘行はプール授業に来ないだろうから、夏休みの間は恵里香も会う機会がないだろうと思い、二人は弘行の家を訪ねた。

 

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