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マリアベル戦記 第十六話 ドSメイド 4

   2016年8月1日  

ドSメイドハリエッティさんにいろいろぶちまけられてしまうリディアは……

 

 ほっとしたり、泣きそうになったりするリディアを見るのはとても楽しい。
 あんな表情をするのが俺への嫉妬や安堵かと思うとゾクゾクする。
「リディア様もこの先セレナティオ公爵夫人になるのでしたら、愛人の一人や二人や十人や百人で嫉妬していては務まりませんよ」
「ひゃ、ひゃくっ!?」
「お盛んな方はそれぐらい平気で手を出しますから」
「お盛んというレベルを通り越しているような気がするんですけど……」
「そうですか? リディア様の身近にもいますよ、そういう方は」
「え?」
「たとえば、ヒエン殿下とか」
「………………」
 途端に不快そうな顔になるリディア。
 ヒエンとの会話を思い出しているのだろう。
 俺がいなかったら今頃リディアはヒエンと一晩を過ごしていたはずだ。
 まあそんなことはさせないけどな。
「アオイ様も来るもの拒まずの方ですからね。見たところリディア様が本命のようですけど、今後は愛人の一人や二人出来てもおかしくありません。しかしリディア様は本妻としてそういう方々に対してきっちりと立場を示さなければなりません。そのリディア様が愛人に嫉妬するようでは、その方達に軽んじられてしまいます。ですから嫉妬は出来るだけ抑えることをおすすめします」
「………………」
 何を勧めてるんだまったく。
 でもまあ、公爵夫人に対する教育としては正しいんだよな。
 俺が言う訳にもいかないし。
 やはりハリエッティはそういう部分で頼りになる。
「その……ハリエッティさんも愛人なのですか……?」
 おそるおそる問いかけるリディア。
 公爵夫人としての立場をしっかりさせるよりも、そこが気になるらしい。
 そういう部分が可愛いと思うのだが、しかし前途は多難かもしれない。
 王女という立場でなければ気楽な愛人にしていたのだが、しかしリディアの場合はそうもいかない。
 どれだけ軽んじられていても彼女はエイフラム法国の第十四王女なのだから。
 それにふさわしい立場を与えなければならない。
「うふふ。私は愛人などではありませんよ」
「そうなんですか?」
「ええ。確かにアオイ様との肉体関係はありますが」
「う……」
「しかしそれは私の仕事でもあったのですよ」
「え?」
「セレナティオ公爵家の次期頭領たるもの、女性の扱いも学ぶ必要がありますからね。もちろん、ベッドの中で行う技術についても」
「ええっ!?」
「具体的には女性を喜ばせる方法を経験ではなく教育によって学んでいただいたのです。要するに性教育ですね」
「せ……性教育って……そういうのとは少し違うと思うんですけど……」
「そうですか? 男性の性教育ならこんなものだと思いますけど」
「うぅ……」
 生々しい話になってきてうつむくリディア。
 可哀想なぐらい真っ赤になっている。
「たとえばの話ですが」
 こほん、とハリエッティが咳払いをしてから続ける。
「は、はい」
 そしてリディアは聞き入る姿勢になる。
 真面目に対応されると真面目に返さなければならないと思っているのだろう。
 真面目な性格なのだ。
「アオイ様と肉体関係を持った女性がいたとして、その女性を満足させられなかった場合はどうなると思います?」
「え? ど、どうなるって……」
 言葉の意味が分からず首をかしげるリディア。
 まあ、分かられても困る。
「貴族の女性というのは噂好きな方が多いのです。つまりアオイ様はド下手だという噂が広がってしまう恐れがあります」
「ド、ド下手……」
「セレナティオ公爵家の次期頭領が女性一人すら満足させられない未熟者だという噂が広がってしまうのは大変な痛手です」
「そ、そういうものですか……?」
「そういうものです」
「はあ……」
 いまいち理解できないらしいリディアは納得いかない表情で答える。
 まあ理不尽な話ではあるけどな。
 どれだけ政治的手腕に優れていても、どれほど人格的に優れていても、ささいなことで家の評判が落ちてしまう。
「ですからベッドテクニックも超一流になる必要がありました。その教育係としてアオイ様のお父上から手ほどきを任されたのがこの私です」
「つ、つまり……ハリエッティさんがアオイの指導を……?」
「ええ。その甲斐あってアオイ様と肉体関係を持った女性達には大変満足していただいております。家の看板に泥を塗らずに済んだという訳です」

 

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