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ファンタジー

マリアベル戦記 第十五話 ドSメイド 3

   2016年7月15日  

二人で楽しい時間を過ごしていると、ハリエッティさん登場。
主人すらも手のひらで転がすドSメイドの魅力とは……

 

 しかしエイフラムには神器があっても使い手がいない。
 保管されているだけの神器はただの飾りになっている。
 使い手がいない神器はその力を示すことが出来ない。
 同じように世界を救った神器を所有しておきながら、それをいつでも使えるルヴェラと使いたくても使えないエイフラムでは自然とその力関係は決まってくる。
 エイフラム法国が今更のように人質を送ってきたその理由は、神器の使えない今の状況でどこかの国と戦争になった場合、ルヴェラからの攻撃だけは避けたいという意思表示なのだ。
 しかしそんな弱腰の国から送られてきた人質に価値などある訳もなく、リディアの扱いは使用人以上下級貴族以下という微妙なものになっている。
 いつ殺されても構わない。
 いっそのこと殺されてくれた方がいざという時に攻め込むことに躊躇がなくなる。
 そんな風に考えているのだろう。
 そしてリディアもそれを理解している。
「二人と一緒にいる時以外、私はいつも一人です。一人で過ごして、そして時間がゆっくりと流れていくのを待つだけです。それでもよかった。そんな時間も、二人と再会出来ることを楽しみにしていれば耐えられました」
「………………」
「でも、昨日は違いました」
「………………」
「昨日は一緒に居たんです。私の近くにアオイが居てくれたんです。一人きりの夜を過ごさなくて済むと分かったら、本当に嬉しくて……でもアオイが離れていくのが怖くて……だから……一緒に過ごしたくて……」
 だから、強引になってしまった。
 誘っていたのではなく、寂しさを紛らわそうとしていただけ。
 ただ一緒に居て欲しかった。
 一緒に眠りたかった。
 同じベッドで過ごしたかった。
 三人でいる時と同じように、楽しい時間を過ごしたかった。
 本当にそれだけだったのだろう。
 それを勘違いした俺が襲ってしまった訳だ。
「……紛らわしいにもほどがある」
「ご、ごめんなさい……」
「言っておくけどな、俺以外の相手だったとしても、たとえばハヅキだったとしても、やっぱりあんなことをしたらリディアは襲われていたと思うぞ」
「うぅ~……」
「だからよかったな」
「え?」
「相手が俺で」
「………………」
「俺のことが好きなんだろう?」
「……否定はしませんけど、このタイミングで言われると何故か腹立たしいです」
 俺の言葉にからかいが含まれていることに気づいたのだろう。
 リディアはふくれっ面で俺を睨んでくる。
「しかし、そういうことなら今日からも一緒に寝るか?」
「え?」
「この屋敷は俺個人の所有物だし、誰を泊めるかも俺の自由だからな。しばらくこの屋敷で過ごすか?」
「え? ええっ!? で、ででででもそれだとアオイに迷惑が……」
「ここまでした相手にそんなことを迷惑だと思うかよ」
 そう言って俺はリディアの首に掛かっているメダルに触れる。
 リディアに似合いそうだと思って彫ったそれは、俺の不器用な気持ちも詰め込んだものだ。
「一人は寂しいんだろ? だったら俺が一緒にいてやるよ」
「……ほ、本当に?」
「おう。嘘はつかない」
「っ!」
 リディアは涙を溜めたまま少しだけ震えて、そのまま俺に抱きついてきた。
 ここまで喜んでくれるなら言った甲斐がある。
 俺はリディアの身体をなるべく優しく抱きしめながら、彼女を安心させるようにその頭を撫で続けた。
「………………」
 それにしても、裸のまま抱きつかれてるものだから、またムラムラきてるんだよなぁ。
 でもこのタイミングで押し倒したら嫌われそうな気がするし。
「………………」
 朝から理性との戦いになるとは思わなかった。
 まあ、リディアと両思いになれたし、ずっと渡したかったペンダントも渡せたし、これからはずっと一緒に居られるし、悪いことばかりでもない。
 どちらかというと幸せだ。
 だからこのムラムラは我慢しておこう。
「大変ラブラブなところ邪魔をして申し訳ありませんが、朝食の準備が整いましたので、出来れば食堂まで移動していただければありがたいですね」
「っ!?」
「っ!!」
 ラブラブしていたところにバケツいっぱいの冷水を浴びせるようなことをしてきたのは、俺の腹心メイドであるハリエッティだった。

 

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