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マリアベル戦記 第十二話 意外な才能 7

   2016年7月5日  

鈍くて煮え切らないアオイについにしびれを切らしたリディアはかなり思い切った行動に出てしまう。
それは……

 

「でもまあ鈍いヤツにはこれぐらいでちょうどいいのか?」
「ちょ……ちょっと待てよ……じゃあリディアは期待してくれているのか? その、俺のことを……?」
 それはあまりにも自分に対して都合がいい可能性なので、最初から考慮に入れていなかった。
 俺はまだリディアに好かれるようなことをした覚えは無いし。
「そこは自分で確認しろよ。それこそオレが言っていいことじゃないだろうが」
「う……それはそうだが……」
 そんな確認をするのがものすごく恥ずかしかったりするのだが……
「だ、大丈夫かな。いきなりそんなこと言って、ドン引きされたりしないかな?」
「ぶっ! あははははははっ!」
 いつもの俺からは考えられないぐらい、情けない顔と声だったのだろう。
 まじまじと俺を見てからハヅキは腹を抱えて笑い出す。
 人が真面目に悩んでいるのに笑うなんて酷いヤツだ。
 かなりムカついたのでとりあえず軽く蹴っておいた。
「イテ!」
「その辺でヤメロ」
「はははは。分かった分かった。それにしてもびっくりだな。そこまで本気なんだ、リディアのこと」
「……悪いかよ?」
「いや、悪くない。全然悪くないぞ」
「………………」
 軽い調子で同意されると神経を逆撫でされてしまうんだが。
「恋愛感情を抜きにしても悪い案じゃないと思うぞ。リディアがセレナティオ公爵夫人になるっていうのは。お前の言う通り、そうなればリディアの立場は強固なものになるからな。人質扱いは出来なくなるし、仮にエイフラム法国が何かを仕掛けてきたとしても、セレナティオ公爵家がリディアを守れる。それまでに子供も産まれていれば言うことなしだな」
「……子供って、さすがに気が早すぎるだろ」
「だよなー。でもリディアがセレナティオ公爵家の跡継ぎを産み落とすことが出来れば、やっぱり簡単には殺せないと思うぞ。そうなれば名実共にルヴェラ皇国筆頭公爵家夫人だからな。陛下だって軽々しく干渉出来なくなる」
「………………」
 リディアを守るだけなら、それは確かに悪くない案なのだろう。
 本当に守りたいと思っているのなら、そういう政略結婚だってアリだ。
 他国の王族の血筋を迎え入れられるのだから、父上も親族もリディアとの結婚は反対しないはずだし。
 けど、それはなんか寂しい。
 本人の気持ちを置き去りにしてそういう話を進めるのは、なんか嫌だ。
 リディアを守ることは出来るだろうけど、でもリディアと気持ちを通じ合うことは出来なくなるような気がする。
 リディアを守るために、リディアへの気持ちを諦める。
 もしかしたらそうするべきかもしれない。
 家のためにも。
 そしてリディアの為にも。
 けれど、やっぱりそれは嫌なんだ。
 俺は、ちゃんとリディアと気持ちを通じ合わせたい。
 子供っぽい感情だって分かってるけど、それでも、本気で好きになった相手だからこそ、それを諦めたくない。
「まあ頑張れよ。オレは応援してやるから」
「………………」
 俺の肩を軽く叩いてから励ましてくれるハヅキ。
 励ましているのか、それとも面白がっているのか。
 前者が二、後者が八ぐらいの割合だとは思うが、それでも恋敵にならない分、まだマシなのかもしれない。
 それからハヅキはリディアのところへ向かった。
 少しばかり落ち込んでいるように見えるリディアに明るく話しかけている。
 面白がって色々と吹き込まれてはたまらないが、まあ一線だけは守ってくれるだろう、と希望的観測を抱いておく。
 ニヤニヤしながら話しかけるハヅキ。
 こそこそと耳元で何かを囁くと、何故かリディアが真っ赤になっている。
 そんなリディアを見て、ハヅキがバンバンと肩を叩いている。
 どうやら面白いネタを見つけたらしい。
 そのネタが非常に気になるが、ハヅキは教えてくれないだろう。
 そういうことは内緒にするタイプだ。

 それからまた三人で色々と話した。
 貴族達が話しかけてきたりもしたけれど、俺達三人でいると近寄るな的な空気が出来上がっているらしく、ほとんど邪魔されることなくいつも通りに過ごすことが出来た。

 

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