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ファンタジー

マリアベル戦記 第七話 意外な才能 2

   2016年6月17日  

リディアの才能が少しずつ開花していき、少年二人は複雑な気持ちになったり……

 

「だがみんながそう思ってくれているわけじゃあない」
「………………」
「このルヴェラ神聖皇国、そしてエイフラム法国は神器という切り札を持っている。それらは国を守るための大きな力となるが、しかし他国がそれを面白く思う筈がない。強力な力を、兵器を手に入れようと考えている諸国は多いはずだ」
「で、ですが神器は使い手を選びますよね。後継者ではない以上、手に入れたところで無駄なのでは……?」
「それはどうかな。そういうヤツらほど自分達なら使いこなすことが出来る、と盲信するかもしれない」
「………………」
 ハヅキの言葉は否定出来ない。
 他国だけではない。
 ルヴェラでさえ、聖剣ルヴェリスの後継者であるハヅキの存在を面白く思わない貴族達が、何とか自分達が使い手になれないものかと画策していたりするのだから。
 皇族の血を引いている以上、それは可能性のないことではないのだが。
 過去の歴史を紐解けば、皇族以外からも後継者が現れることはあったのだ。
 皇族の血をほとんど引いていない筈の下級貴族の息子が後継者に選ばれたことさえあった。
 ハヅキはそんな現状を誰よりも理解している。
 ハヅキ自身はそんな力を望んでいないのに。
「それに後継者にこだわる必要はないんだ。戦を仕掛けて、勝利すれば、その血筋ごと神器を手に入れることが出来るんだからな」
「ですが、神器を持つ国に勝利することはひどく難しいと思います。聖剣ルヴェリスと魔杖エルフィンはかの邪竜を滅ぼしたのですから。その力を戦争に利用すれば、戦力差は圧倒的です」
 リディアの言うことはもっともだ。
 だからこそ両国は現状で平和を保っていると言える。
 他でもない、二つの神器が戦争の抑止力となっているが為に。
「一国だけならな。だが国と国が協力して襲いかかってきた場合はその限りじゃない」
「あ……」
 その可能性までは考えていなかったようで、リディアは不安そうに俯いた。
「まあ神器狙いで攻めてきたとしてもその後がまた問題になるだろうから、そう簡単には手を取り合ったりしないだろうから今のところは大丈夫だけどな」
「………………」
 神器狙いで協力するのならば、勝利した後に後継者の血筋と神器そのものの権利について争うことになる。
 そうなると分かっていて手を取り合える国はなかなかない。
 戦争で疲弊したあとに再び戦争になるのだ。
 敗北すれば散々であり、勝利したとしても国力は大幅に下がってしまうだろう。
「けれど可能性はゼロじゃない」
「はい……」
「だから戦うっていう心構えだけはいつだって必要なんだと思う。国を守る為にも、そして身近な誰かを守る為にも」
「そう、ですね。守る為に戦う。その心構えはとても尊いと思います」
 その考えには共感出来るようで、リディアはしっかりと頷いた。
 もちろん、戦いそのものを肯定しているわけではないのだが。
「もちろん国と国の争いになった場合、一人が振るう剣に出来ることは限られている。それでもこうやって積み重ねた努力だけは、絶対に自分を裏切らない。オレはそう信じてるから、強くなることを諦めない」
 一人の力はとても小さい。
 けれど一人の力でも出来ることがあるかもしれない。
 一人の力だからこそ出来ることがあるかもしれない。
 俺達はそう信じて、お互いを鍛えている。
「俺も同じだな。この剣がいつかリディアやハヅキを守れるなら、努力を続ける意味はある。そう信じている」
「わ、私もですか?」
 守るべき対象に自分が入っていたのが意外だったらしく、リディアはあわあわと戸惑っている。
「む……。そこで意外そうな反応をされることこそ傷つくぞ。リディアは俺達の大切な仲間だろう。守るのは当たり前だ」
「え? その……」
「そうそう。それにオレはともかくアオイのヤツはリディアが……げふうっ!」
 余計なことを暴露しそうになったハヅキの鳩尾に拳をねじ込んでおく。
 そういうのは無粋だからヤメロ。
 気持ちを伝える時は自分で決める。
 ちょっとした演出だって考えてるんだから余計なことをするんじゃねえ。
「?」
 そんな俺達のやりとりを見て首を傾げるリディア。
 よかった。
 何も伝わっていないみたいだ。
 こんな形でバレたらさすがにたまらない。
「何でもないから気にしなくていい」
 とりあえずそんな風に取り繕っておく。
「そ、そうなんですか? ハヅキがかなり痛そうなんですが」
「気にしなくていい。男同士の暴力はこれぐらいが普通だ」
「……男同士の暴力って怖いですね」
「こんなもんだろ。な?」
 ハヅキの方を振り返って当然のように同意を求めるのだが、
「………………」
 突然殴られたハヅキは恨みがましく俺を睨むだけだった。
 むぅ。
 睨むぐらいなら最初から余計なことを言わなければいいのに。

 

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