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ファンタジー

マリアベル戦記 第五話 日溜まりの時間 3

   2016年6月10日  

好きな子ほど虐めたくなるというのは、どこの世界でも共通かも?

 

「あ……あの……私はまだ行くとは言っていないんですが……」
「来ないのか?」
「うっ……」
 わざとしょんぼりした表情を作ってみせる。
 こうすればお人好しのリディアは申し訳なさから参加してくる、という流れになるのを確信している。
「俺はリディアが参加してくれるのを楽しみにしてるんだけどな」
「あう……」
 更に攻め込む。
 落ち込んでいる風に装ってから、じわじわと攻め落としていく。
「参加するよな?」
「ええと、その……」
「参加して欲しいんだけど?」
「……は、はい。参加します」
「よしっ」
 わしゃわしゃとリディアの頭を乱暴に撫でる。
「はわわわ~!?」
 銀髪を乱されて慌てて整えるリディア。
 少しばかり涙目になっているのがまた可愛い。
 こういう反応を見たくて、時々はいじめたくなってしまう。
 もちろん笑顔の方がずっと可愛くて魅力的なので、本気で苛めたりはしないのだけれど。
「よし。じゃあ早速採寸だな」
「え? え?」
 戸惑うリディアのことなどお構いなしに、俺は連れてきていたメイドを呼ぶ。
「おーい、ハリエッティ」
「お呼びでしょうか、アオイ様」
 呼べばすぐに出てくるスーパーメイド、ハリエッティ。
 二十二歳のクールビューティ。
 青髪碧眼の彼女は俺の専属メイドだ。
 身の回りの世話からリディアのサポートまで、一通りを任せている。
「彼女に似合いそうなドレスを作って欲しい。採寸からデザインまで任せる」
「かしこまりました。デザインのリクエストなどは?」
 クールな彼女はクールに答える。
 ハリエッティを取り囲む全ての空気が『クール』と表現するに相応しい。
 しかし『クール』であっても『冷淡』ではない、というのが彼女の素晴らしいところだ。
「そうだなぁ。強いて言うなら胸が強調されるようなデザインかな」
「ちょ……アオイ!?」
 慌てて胸元を隠すリディア。
 ……自分で言っておいて何だが、ぶっちゃけ隠すほどには大きくないぞ。
 ひょーじゅんサイズよりも少しばかり控えめだし。
 もちろんそんなことを言えば本気で傷つけかねないので自粛するが。
「詰め物はいかがいたしますか?」
「詰め!?」
「あー……いや、そのままで……」
「かしこまりました」
 しかし俺が自粛していてもハリエッティは容赦無くリディアを抉る。
 がびーんっ! というちょっと面白い表情になるリディアを見て、俺は気まずそうに頬を掻いて答えた。
 さすがにまだ成長期だろうし、詰め物は哀れすぎる。
 そんな俺達を見てハヅキが腹を抱えて笑っている。
 やりとりがかなりツボにはまっているらしい。
 気持ちは分かるけど笑われる対象の中に俺も入っているかと思うとやっぱり腹立たしいけれど。
「まあアレだ。リディアが一番可愛くなるようなデザインで頼むよ。せっかくの夜会だからな」
「お任せください。胸元を強調した可愛らしいドレスを仕立て上げましょう」
「む、胸は強調しなくてもいいですからっ!」
 胸元を隠したままのリディアが反論するが、ハリエッティはにっこりと笑顔で受け流す。
 リディアの笑顔が向日葵ならば、ハリエッティの笑顔はダリアだろうか。
 紅のダリアは優雅と情熱を併せ持つハリエッティによく似合う。
「申し訳ありませんが、わたしの主はリディア様ではなくアオイ様ですので。主人の望みを叶える為には、リディア様の要望を取り入れるわけにはいきません」
「そ、そんなぁ……」
 じわぁ、と再び涙目。
 うわー、容赦無いな、ハリエッティ。
 でもぐっじょぶ。
 俺はこっそりとハリエッティに親指を立ててその仕事ぶりを讃えておいた。
 それに気付いたハリエッティはくすりと妖艶に微笑む。
 うーん。
 主人であるはずの俺が手のひらで踊らされているように思えるのは気のせいだろうか。
 まあ不快じゃないからいいけどさ。
 ハリエッティが俺のためにならないことをするわけがない。
 その程度には彼女のことを信頼している。

 

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