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ファンタジー

DISCORD BRAKERS – 2 [ 3 ]

   2016年9月12日  

 もう一人の自分は「イケメン騎士」で「魔法剣士」で「ハチミツ愛好家」!?

───イケメン騎士とその仲間たちと共に、音律魔法で「調律」された世界から飛び出した、三つの宝玉を回収せよ!
 

 割とイケメン、更に最強。でも救いようのないハチミツ愛好家…な能天気なキラのペースに引きずられつつ、異次元世界「ルーン王国」から流星となって表れた三つの宝玉を探すため、藤崎奏は「もう一人の自分」こと、キラ=ウォルダーと共に宝玉回収に動き出す。

 

 キラは自信満々に言うものの、奏は本当に学校の皆に魔法がかけられているのか気になっていた。しかし……職員室に奏とキラが入るなり、「待っていたよ、留学生のキラ君、だよね?」と、教頭がキラに駆け寄ってきた。これを見る限り、キラが言うとおりにきちんと魔法はかけられていたようである。奏はほっと胸をなでおろす。
 そんな奏をさておき、「さあ、こちらへきて。わが校についてせつめいしよう」と、教頭はキラを応接セットへと案内する。そしてパンフレット等をキラに手渡しながら、さっそく高校での生活についてレクチャーし始めた。その隣にはいつのまにか奏のクラスの担任もやってきていて、

「私が担任……君の専属のティーチャーだ。困ったことがあったら何でも聞いてください。それに、君の世話役としてそこにいる藤崎奏も協力してくれるはずなので、何でも聞きなさい」
 な? 藤崎。担任はそう言って、キラの横で一緒に話を聞いている奏に笑顔で話しかける。
 奏は笑顔で「はい」と返事をしつつも、心の中では「何が専属ティーチャーだ!」と舌を出している。
……ていうか。
 奏がキラと屋上で出会ったのは、元はといえばこの担任が、奏に望遠鏡を屋上まで運ばせたのが原因なわけで。それがなければ、奏が色んな厄介ごとに巻き込まれることはなかった。
 そう、この厄介な事情を生み出した張本人が目の前に! そう思うと飛び蹴りの一発はお見舞いしてやりたい奏であったが、それはぐっとこらえる。
 それに。
 腹は立つものの、それがなければ、「もう一人の自分」に出会うという世にも不思議な出来事や、奏が「なんちゃって魔法使い」になることもなかった。それはつまり、厄介ごとに巻き込まれる分、普通だったら考えられない刺激的な体験をすることもなかったということにもなる。
 そう思うと、自然と怒りが収まりつつもしなくはない。
……
 とりあえず、今回のところは許してやるか。いや、許せるかなあ……まあ、蹴り飛ばすのはやめておこう。奏は大きなため息を一つつくと、やたらと目を輝かせているキラと笑顔の担任と共に、教室へと向かう。
 教室は普段とかわら……無いように思えたが、奏の両隣の席がなぜか空席になっていた。

 なにこれ、どうしたの。先週末までは空席なんてなっていなかったのに、何故。
 しかも私の両隣だけ何で空席? もしや新たなイジメ?!
 いつもと変わらない教室なのに、不自然な席順。奏がそんなことをふつふつと思っていると、そんな奏を無視しつつ、担任がまず、キラをクラスメートに紹介をした。
 そして、
「キラ君は、藤崎の右隣に座ってくれ。左側は、実はもう一人、留学生が来る予定なんだが……到着が遅れているのか、まだ来ていないんだよ」
 と言った。
 どうやら奏の両隣の席は、キラと、もう一人今日からくるという留学生の為に空けた席らしい。
 ああ、イジメじゃなかったのね! 奏はとりあえずホッと胸をなでおろすも、「それにしても」と改めて呟く。
 確かに奏の高校は、学校の方針からかしても普通の高校と違い、海外からの留学生も多い。今朝だって、一学年下の伊織が留学生の話をしていた。それに加え、キラはともかくもう一人、奏のクラスに留学生が来るという。知っているだけで三人。何だか今週、留学生フィーバーでも起こっているかのようだ。
 でも同じ日に同じクラスに(キラの場合は特例だけど)二人の留学生なんて、確かに珍しい。しかも、来るはずがこない、というのは一体どうしたのだろう。
 お国の事情で、急きょ留学中止? それとも飛行機が遅れているだけ?
 そういえば伊織が朝、「滞在は寮ですか?」とキラに聞いていたけれど、まさかその留学生、寮から学校への道で迷っているとかあるまいな……? そうなると相当の方向音痴だと思われるし救いようがない。
「……」
 ……まあ心配したところで、奏がどうこう出来る問題ではない。
 そう。それよりも奏にはやらなくてはいけないことがあるのだ。
 行方と得体の知れぬ謎の留学生よりも、はるかに厄介で恐らく労力も使う……そう、奏にはキラの世話が待っているのだから。
 そう、奏には初めて「学校」に通うキラを学校にいる間はサポートしなければならないという大役があるのだ。

「奏、キョウカショとは何だ?」
「勉強する為のテキスト……指南書みたいなものよ」
「奏! 何だこの不思議な道具は! ボタンを押すと、不思議な物体が出て文字を記す事が出来るぞ!? 魔道具か!?」
「だっ……魔道具とかいうな!」

 ……自己紹介後、席について奏から文房具を借り受けたキラが早速叫んでいる。
 勿論クラスの皆はそのやり取りを聞きながらクスクスと笑っており―――キラとの学校生活がスタートしてわずか数秒で、おととい同様、心労で倒れる寸前の状態になりつつある奏であった。
 

 

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