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ファンタジー

DISCORD BRAKERS [ 18 ]

   2016年2月8日  

もう一人の自分は「イケメン騎士」で「魔法剣士」で「ハチミツ愛好家」!?

───イケメン騎士とその仲間たちと共に、音律魔法で「調律」された世界から飛び出した、三つの宝玉を回収せよ!
 

割とイケメン、更に最強。でも救いようのないハチミツ愛好家…な能天気なキラのペースに引きずられつつ、異次元世界「ルーン王国」から流星となって表れた三つの宝玉を探すため、藤崎奏は「もう一人の自分」こと、キラ=ウォルダーと共に宝玉回収に動き出す。

 

***

その頃、ルーン王国では。
 

「この、感じ……」

戦火が再び激しくなりつつある城下の光景を高台から眺めつつ、何となく手に触れた宝物であったが、だがそこから感じる摩訶不思議な感覚に、手にしていた女性は思わず戸惑いの言葉が漏らした。

「いかがされました、カノン様」
その声に、声の主と共にその場所から城下を眺めていた壮年の騎士が声をかける。

「……リラから今、暖かい光が洩れるような感覚を受けました」
声の主……カノンと呼ばれたその女性は、長くそして豊かな金髪を静かに揺らしながら、手にした宝物・聖琴リラを眺める。

彼女の名は、カノン=レフォルガント=ルーン。
ルーン王国の次期継承者とされる、この国の第一王女である。
その美しさは三国一とされ、それに加えて知識も豊富、国内外で彼女に憧れを抱く者もとても多いとされている。
当然ながら彼女への縁談話も多いのだが、何故か彼女は持ち寄られる縁談をすべて断り、いつまでも独り身を通している。
早くに母を亡くしているので、これについては国王である父は本心としては少し嬉しくもあるが、国王という立場からするといつまでも嫁に行かぬ娘を心配しているのは言うまでもない。美しいとはいっても、永遠にその美貌が続くわけではない。美しい内に、女性としての幸せを娘にも与えてやりたい……親としては当然の想いである。
だが当のカノンにその気はなく、あくまでも一女性の幸せの前に、皇女としての責任を全うしたい。国民の為にこの身を尽くしたい。その思いの方が強いようである。実際の所、カノンは男性顔負けの意欲と意思を持って、ルーン王国の次期継承者になるべく日々、父の元でその政治手腕を学んでいるのであった。

そんなカノンが持つことを許されている、聖琴・リラ。国の運命を左右するほどの力を持つリラと、それを彩る力の宝玉たち。
戦いの最中、不運にも異次元世界に飛んでしまった三つ宝玉を探させるべく、現在そちらに信頼できる使者を派遣して回収に努めている状況である。
そんな中、宝玉自体はまだ戻っては来ていないが、何故かその内の一つから、まるでそこに宝玉が戻ったような……暖かい光を感じたのであった。

「リラから、光……でございますか?」

そのカノンに、再び声をかける壮年の騎士。
この壮年の騎士こそ、使者として選ばれた騎士・キラ=ウォルダーを魔鏡の中に突き飛ばし……もとい、導いて、異次元の世界へと送り込んだ近衛兵団騎士団長のアロンである。

キラの代わりに自らも戦場へ赴き、現在指揮をとっている彼であったが、特に示し合わせたわけではないのだが、こうして時々戦況を外から見る為にやってきているこの場所でカノンと出会うことも多く、会話をする機会も多いのである。
アロンはカノンの幼少時よりよく知っており、またカノンも、幼少の頃はよくアロンにせがんで遊んでもらったこともある、良く知った仲なのである。

カノンは「ええ」とアロンにゆっくりと頷いて見せた。
そして、

「ええ。この暖かい光……もしかしたら、キラが宝玉を一つ見つけたのかもしれないわね」
「なんと……早速、後で確認してみます」
「ええ。恐らくキラの事ですから、きちんと報告してくると思いますが……あの子は本当に優秀ね。アロン、詳細待っていますよ」
「かしこまりました。それにしても、もしそれが本当なら、流石国王陛下とカノン様でございますね……使者の人選に間違いがない」
「ふふ……でもアロン、貴方がもしもこの状況で私と同じ立場なら、きっとキラを選んでいたのではなくて?」
「そうですね。ただしこの戦火の中では、迷いますが」
「そうね。キラは、本当に我がルーン王国の為に働いてくれますものね……こういった特殊任務でも、戦場という場所での働きでも、いう事ありません。あの子は本当に素晴らしい騎士として成長しました。それもこれも、あなたのおかげね、アロン」

カノンはそう言って、今は宝玉を失い色あせているリラを手で撫でながら、笑みを浮かべる。
 

 

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