幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ファンタジー

DISCORD BRAKERS [ 16 ]

   2016年1月25日  

もう一人の自分は「イケメン騎士」で「魔法剣士」で「ハチミツ愛好家」!?

───イケメン騎士とその仲間たちと共に、音律魔法で「調律」された世界から飛び出した、三つの宝玉を回収せよ!
 

割とイケメン、更に最強。でも救いようのないハチミツ愛好家…な能天気なキラのペースに引きずられつつ、異次元世界「ルーン王国」から流星となって表れた三つの宝玉を探すため、藤崎奏は「もう一人の自分」こと、キラ=ウォルダーと共に宝玉回収に動き出す。

 

「ひっ!?」
……ガクン!
時間が動き出した瞬間、胸が大きく鼓動した直後。奏の膝ががくん、がくんと両膝震えた。
その上、何故か腕や足がぶるぶると震えて、まっすぐに立っていることさえ出来ない。
何だろうか、この感覚。あえて言うなら……筋肉痛が急に全身を襲って……!?

「うあっ……こ、これは……?!」

このままでは、地面にへたり込んでしまう。
奏は咄嗟に手にしていた魔法ステッキを杖にするけれど、その杖にしているステッキを持つ腕も、ぶるぶると震えている。

一体これはなんなの!? 何で自分で立つことすら……!?
奏が何とか自分の力で身体を支えながらキラを見ると、

「周りの時が止まっている間、我らは動いている。その時に受けたダメージ等は、再び皆の時間が動く時に、一気に我らに科される。私のように普段から鍛えている人間は、少しのダメージや疲労など、一気に課されても問題はない。だが奏は……」
だから、身体を鍛えろと言ったのに。キラは、「やれやれ」という表情でそんなことを呟く。

「そ、そういうことは早く言いなさいよ! ってことはこれは……」
「うむ。恐らく、慣れない魔法発動を何回も行った事による、急激な身体疲労だな」
「なっ……」
「一度だけなら恐らくここまでにはならなかっただろうが、二度、しかも全身全霊を込めて魔法を使えば、それはそうなるだろうな」
「わ、わかっていたなら最初に教えておきなさいよー!」

奏は、キラに今にも掴みかかってやろうという勢いでそう叫ぶも、すぐに腕や足の痛みにやられとうとう……地面に座り込んでしまう。

「やれやれ、仕方がない」
自分がすべての引き金だというのに、他人事。
しかも、上から目線のキラはそう言って、「ほら、乗れ」と、奏を自分の肩にもたれ掛けさせる。
どうやら、おんぶをして運ぼうとしてくれているらしい。

「い、いいわよ! 恥ずかしい!」
夜の九時なんて、まだまだ人通りもあるしこのまま電車にだって乗らなくてはいけない。奏が全力で否定するも、口の勢いは良くても身体の自由は効かないわけで、

「まあ、いいではないか。それに、帰りがてら色々と話して聞かせよう」
「くっ……じゃあじゃあ! まずは、あの『音律の魔術師』ってやつ! 何よあの肩書! 何で黙ってたのよ、そうやって呼ばれていたこと!」
「あれは、他の者が私を勝手に呼んでいるだけで私の意図するところではない」

自分で自分が噂されている呼び名を語らないだろう? 普通は。キラはさも当たり前のように、奏に語らなかった理由を背中にいる奏にそう答える。

……まあ、そりゃそうだ。
例えば人々に「荒れ地に咲く一輪の薔薇」って呼ばれいたとしても、本人が、自己紹介で自分からそれは言わないだろうし。奏は不覚にもキラの理論に納得してしまう。
ただ、他にも気になることはあるわけで、
 

「じゃあさ、何でそう呼ばれている訳?」
「ん? ああ……私が持つ剣は、音に深く加護されている。それに魔力を注ぐことで、世を取り巻く『不協和音』を排除し『音』を正常の形に整えることが出来るのだ」
「へえ……」
「その剣を用い、国王陛下や国の為に戦っている内に、勝手にそう呼ばれるようになったのだ。それだけの事」
「ふーん……で、その『不協和音』ていうのが、さっきのメアみたいにキラたちの国を襲う奴らなの?」
「まあ、そんなところだ。『不協和音』が無くなれば……奏には分からないかもしれないが、そこは美しい旋律が流れる穏やかな世界へと変わるのだ。逆に『不協和音』があると、たちまちそこには酷く乱れた旋律が流れ調子が狂う。それを『調律』するのが我らの役目」
「だから、キラたちの使う魔法は音律魔術って言われるのね」
「そうだ」

ちなみに我が国の近衛兵団には、私の他にも、そのような力を持って任務に就いている者が多数いるのだぞ?
キラは、楽しそうにそんなことを言っていた。
 

 

-ファンタジー
-, , ,