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ファンタジー

DISCORD BRAKERS [ 15 ]

   2016年1月18日  

もう一人の自分は「イケメン騎士」で「魔法剣士」で「ハチミツ愛好家」!?

───イケメン騎士とその仲間たちと共に、音律魔法で「調律」された世界から飛び出した、三つの宝玉を回収せよ!
 

割とイケメン、更に最強。でも救いようのないハチミツ愛好家…な能天気なキラのペースに引きずられつつ、異次元世界「ルーン王国」から流星となって表れた三つの宝玉を探すため、藤崎奏は「もう一人の自分」こと、キラ=ウォルダーと共に宝玉回収に動き出す。

 

と。
 

涙を浮かべている奏の、左手に握っていた例の赤い石が光を放った。
そして……何と、奏が右手に持っていた例の魔法ステッキの先端部、オモチャのキラキラが付いている部分へと吸い寄せられるかのように、その石は輝きながら移動する。
やがて石はステッキの先端近くに、勝手に落ち着いて張り付いて止まった。

「!」
まるで、自らの意思を持っているみたいだ。奏がそんなことを思っていると、石は再びその場所で光り、急にグイ……とステッキ自体を前方へと誘う。
それと同時に、メアが放った禍々しい光がそのステッキを直撃し……なんと、光をメアに向かって跳ね返したのである。

『グアアア!!』
まさか自分の攻撃が跳ね返って自分を襲うと思っていなかったメアは、夥しげな悲鳴を上げてその体を吹っ飛ばされる。
……ドオン!
直後、建物との境のガラスの壁に身体を叩きつけられたメアは、轟音と共に床に崩れ落ちていた。
 

「!?」
この石……石単体でもこんなことが出来るの!? 奏はその光景を目にしながら言葉を失う。

ステッキ自体はおもちゃだし、当然ながらこれには、メアの魔法を弾き返す力などない。
ということは、これは例の赤い石のパワー、なのだろう。
魔法が絡む石って、本当にあるんだなあ……。奏がそんなことを思いながら、ステッキの表面で勝手に落ち着いている石を見つめていると、

「奏! メアに向かって魔法を……!」
キラが不意にそんなことを叫んだ。

「え、え? だ、だって今のはこの石のおかげなんだよ!? しかも勝手に動いて……ま、またお願いすればこの石が何かしてくれるの!?」
予想外の提案だった。それゆえ、奏が少し混乱しながらキラにそう返すと、

「いいや、石ではなく昨日、私がお前に授けた力を使え!」
「力……」
「メアは今、弱っている。そこにお前に授けた魔法……我らの邪魔をする者の力を削ぐ手伝いをする魔法を、メアにぶつけるんだ。その後、私がメアに止めを刺す!」
キラはそう言って、先程から使っていた自らの剣を構える。

「わ、わかったけど……」
奏も、そんなキラに誘われるようにして例のおもちゃの魔法ステッキをメアに向かって構えた。だが、その胸中はかなり複雑である。
 

……キラの言いたいことは判った。
奏が何をしなくてはいけないかも……わかった。
うん。分かったんですどね。
 
 
 

……ところで魔法って一体どうやって発動すればいいわけ!?
 
 
 

奏は、根本的な事で躓き、苦悩していた。
 
 

そう。
よくテレビやアニメや漫画なんかだと、ある日突然魔法の力を授かった主人公たちが、いきなり必殺技の名前とか口にしながら大活躍をする。
しかしよく考えてみるとだ。
そういう登場人物たちとは違い、こちらとらそんな想像力も、そしてそういう必殺技の知識が流れ込んでくるわけでもないし、一体どうしてよいのか分からない。
こういう時はあれだろうか。とりあえず「祈れ」ばいいのだろうか。
困った時の神頼みって諺もあるけれど……
……
 

何て、行き当たりばったりの魔法使いだ。時間もないし状況は切迫しているというのに、奏はこの状況がもどかしかった。
そうこうしている内に、メアは立ち上がりそうだし、キラは「奏! 早く!」とか急かすし。この状況に半強制的に巻き込まれた者としては、たまったものではない。

でも、迷っていても仕方がないのも確かだ。奏は心を決めると一度深呼吸をしてからステッキを強く握りなおした。

「ええいっ……出ろ出ろ、魔法、出ろよー……」

あえて命名するなら、「でろでろ魔法」。もう、センスもへったくれもないネーミングである。
でも、方法がわからない以上は、そうやって念じて授けられた未知なる力をひねり出すしかない。
奏は、両手で改めてオモチャの魔法ステッキを握り締めながらそう念じた。

……すると。
 

 

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