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ファンタジー

DISCORD BRAKERS [ 14 ]

   2016年1月12日  

もう一人の自分は「イケメン騎士」で「魔法剣士」で「ハチミツ愛好家」!?

───イケメン騎士とその仲間たちと共に、音律魔法で「調律」された世界から飛び出した、三つの宝玉を回収せよ!
 

割とイケメン、更に最強。でも救いようのないハチミツ愛好家…な能天気なキラのペースに引きずられつつ、異次元世界「ルーン王国」から流星となって表れた三つの宝玉を探すため、藤崎奏は「もう一人の自分」こと、キラ=ウォルダーと共に宝玉回収に動き出す。

 

 その瞬間である。

「奏ー!」

 フワッ……
 そんな声が聞こえたかと同時に、突如奏の身体に羽が生えたような感覚が芽生えたかと思うと、奏は地面から素早く引き上げられ、そして……やがて立たされた。
 奏が目を開けてみると、そこには……見たこともない険しい顔つきのキラが立っていた。
 どうやら奏の叫び声を聞いたキラが慌ててこちらにやってきて、間一髪の所を抱き上げて救ってくれたようだ。

「あ、あ、ありがとう……」
 奏が今にも泣きだしそうな顔でキラに礼を述べると、

「礼は、いい。それより……」
 キラはそう言って、先程奏に拘束具のようなものを飛ばしてきた魔物に険しい表情のまま対峙していた。

 魔物はそんなキラの姿を確認すると、なんと……再び先ほどの美しいお姉さんの姿……まではいかないが、
 再びメキメキメキ……!と音を立てながら、わりとナイスバディ、でも手や、そして臀部からは尻尾のようなものが出ている人型の魔物の姿へと変化した。

 どうやらその姿が、最終形態らしい。
 というより、一体この魔物は!?

「……」
 奏がキラの背後に素早く移動しながらそんなことを窺っていると、

『待っていたよ、この時を』

 魔物はそう言ってにやり、と不気味な笑みを浮かべながら語りかけていた。
 どうやらこの魔物、キラの事を知っているらしい。

「貴様は、メア! やはり卑劣なうぬが国は、我らの宝玉を狙って……!」
『そんな大事な宝玉を、うかうか別次元に飛ばしてしまう方が悪いのさ。というより、アタシには宝玉なんぞ興味はない。あるのは、お前の命を奪うことのみ!』
「私には宝玉を我が王と、カノン様の元に私が責任を持ってお戻しする役目がある。それを全うするまで、お前にこの命をくれてやることは出来ぬ!」

 うぬが国、と言っているところを見ると、この魔物……メア、という名前みたいだけど、メアはスベラニア王国側の魔物のようだ。
 そりゃそうか。仲間が、いきなり奏を襲うなんてありえない。
 しかも、キラを追ってこちらへやってきたとは……。

「……」
 やっぱり奏が考えていた最悪の想定通りになった。
 奏は心の中でそんな事を思う。

 きっとこの魔物、宝玉が消えたとされるこの地点で、こうしていつでも行動を起こせるように、忍び込んでいたのだ。
 そしてキラと戦う機会を狙っていた……わざわざ、人間の姿に化けて、身をひそめて。

 でも、待って?
 メアは人間の姿に化けてここで働いていたということは、キラ同様、もう一人の「自分」をこっちで早々に見つけ出したってことだろうか。
 奏以外の人間とも会話をしていたはずだし、話も理解していたのならそうのはず。
 ただ……

「……」
 生活に溶け込み潜んでいたということは、恐らく奏とキラのように『もう一人の自分』が「共存」しているではなく、その人を強引に自分の中に取り込み、こっちの知識だけを吸収してしまったのではないだろうか……。

 流石魔物。というより、恐ろしい、奴。
 突如姿を現したメアに対し、奏がそんなことを思っていると、

『とにかく、アタシにはお前の役目や宝玉なんぞに興味はないのさ。奏の目的は、一つ……』

 メアはそう言って、ヴォン……と先程同様に何やら禍々しい武器を魔法で作り出し、構えた。
 そして、

『お前を容赦なく、切り裂いてその命を始末する。ふっ……忌々しいお前が始末されたとなれば、きっと向こうは大騒ぎだよ? キラ=ウォルダー。いや……音律の魔術師の方が呼ばれ慣れているかい?』
 そう言って、先程作り出した禍々しい武器で奏達に切りかかってきた。

 ヒュン!
 空を切り、明らかに刺さったら痛そうな棘が無数についているハンマー状の武器で、メアはキラに向かって飛び込んできた。
 そんなメアの攻撃の一方、奏はメアの動きよりも先程の発言の方に気を取られ、口をパクパクさせている。

 

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