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ファンタジー

DISCORD BRAKERS [ 7 ]

   2015年11月20日  

もう一人の自分は「イケメン騎士」で「魔法剣士」で「ハチミツ愛好家」!?

───イケメン騎士とその仲間たちと共に、音律魔法で「調律」された世界から飛び出した、三つの宝玉を回収せよ!
 

割とイケメン、更に最強。でも救いようのないハチミツ愛好家…な能天気なキラのペースに引きずられつつ、異次元世界「ルーン王国」から流星となって表れた三つの宝玉を探すため、藤崎奏は「もう一人の自分」こと、キラ=ウォルダーと共に宝玉回収に動き出す。

 

「どこが問題ないのよ。重要な部分でしょうが」

細かい所を心配する奏と、かなり大雑把というかあっけらかんとしているキラ。本当に「同一人物なのか」と思えるほど全くの正反対な二人の性格を思うと、奏はやっぱり、どこか不安である。

本当の本当に、奏とキラは同一人物なのだろうか?
いや、もしかして自分では気が付いていないが、客観的にみるとこういう風に見えているのだろうか。 ……そう考えると、相当複雑な奏であった。するとキラは、そんな奏に対し、

「私とて、事情も分からぬ人々の前で派手に動くのは気が引ける。なので、宝玉の存在を察知したら、その日の晩に行動を起こすつもりだ」
「夜に行動するってこと?」
「このエメテリオの力を借り、そう長くは難しいが、『時間の流れ』を一度止める。その間に、我等は宝玉を回収する」

あくまでも「我等」と複数形で行動することを強調しながら、そう説明をした。

「そ、そんなこと出来るの!?」
奏はキラの言葉に目を白黒させる。

時間の流れを止める、ということは……いわゆる、ゲームとかの中に出てくる必殺技、もとい、そういう中に出てくる魔法使いが使う現象の一つだ。それが、こんなごくごく自然な流れで自分の目の前で起こるのか…この非科学的かつ大胆な事柄に、奏は戸惑いを隠せない。
だが……もしかしたら、この世界には奏が知らないことがたくさん渦まいていて───異次元云々の話が出ている時点で確定だとは思うが───実は既に、知らない内に他の魔法使いが時間を止める魔法を使って何か行動をしていて、奏は自分が今まで生きていた中で、このような体験も知らず知らずに経験をしていたのかもしれない。
……勿論、そんな簡単に時間を停められてしまうのは叶わないけど、まさかこんな形で、考えられないような不可思議現象を体験するかもしれないだなんて。身近で起こりそうな現象なのに、考えられないような大それた魔法。そのあまりの対照的な出来事に、奏の頭は混乱してしまう。

そんな奏に対して、

「エメテリオの力を借り、一時的に私の魔力も増幅させれば、時間停止は出来ないことではない」
「エメテリオの力ってすごいのね……」
「エメテリオも凄いが、実は私は剣の腕もたつが魔法の力もすご……」
「こんな、見た目は幻想的な可愛らしい石なのに……」

キラは自分の実力をさらりと自慢しようと試みているようだが、奏はそれを完全に無視しつつ、キラの手の中にすっぽりと収まっているエメテリオを指で突っつきながらそう言った。そんな奏に対しキラは、

「それに……時間を止めて作業をする事、明らかになることがある」
「明らかになること……?」
「そうだ」
キラは、今の段階ではそれが何なのかを明かすことはなかったが、

「……というわけで、奏。早速夜が明けたら例の電波塔に行くぞ」
「ええ!? ほ、本当に行くの? ていうか、やっぱり私も……?」
「当然だ! 我等王国騎士は、主より託された命を忠実に遂行する義務があるのだ!」
「いや、私は別に騎士じゃないし……」
「奏の初陣にふさわしい舞台になるかもしれないな」

例の如く、奏の主張は全く聞き入れる様子もないキラは、強引にそう決め込んで目を輝かせていた。
 

……そりゃあ、別に明日は土曜日だし。学校も部活もたまたま両方お休みだから、「星陵スカイタワー」に行くのは別にいい。関わってしまった以上、このキラを一人であの人ごみの中に放り出して「調べてこい!」というのも、気が引ける。
しかし、キラが思い描くように、順調かつ円滑に色々と進むのだろうか。休日の「星陵スカイタワー」なんて人が腐るほどいる観光スポット。そんな中で、エメテリオを使って宝玉探し、なんて出来るのか。
同じ場所にそんなに長く立ち止まっていられないだろうし、思うほど狭い場所じゃない。しかも、奏達が行ける場所は限られているし……ガラス張りの内側から、エメテリオがきちんと反応するかも怪しいところだ。
……

本当に、大丈夫なのかなあ。不安と心配しか思いつかない奏であるが、しかしキラは言っても聞かないだろうし、それに手がかりがあまりない以上は、一度はやはり「星稜スカイタワー」には行かないとならないだろう。

「分かったわよ。一緒に行くけど……でも、本当に気をつけてね? 不用意に人前で魔法なんか使っちゃだめよ?」
突き放すわけにはいかない分、奏は、キラに再度念を押した。キラは奏のその優しさというか不安というか、そういうのを本当に理解しているのかどうか不明ではあるが、とりあえずは、

「任せておけ! では奏、明日に備えてよく休んでおけよ」

……と、明らかに良く考えていないと思われる態度でそう言うと、エメテリオを持って部屋を出て行ってしまった。しかもその手には、いつのまにか奏の部屋の片隅にあったファッション雑誌が。どうやらその雑誌を見て、こちらの世界での服装を勉強しようとしているらしい。魔法で同じ服を調達することでも出来るのだろうか。そう考えると、魔法も使い方次第で本当に便利なものだ。

とりあえず、置いてあった雑誌がコスプレ専門誌とかじゃなくて良かった。奏はそこだけはとりあえずほっとするも、

「なにが、任せておけ! よ。任せられるわけないじゃないの」

それ意外の所に安堵感など微塵もない。改めて一人になった部屋の中で、奏は大きなため息をつく。

 

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