幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ファンタジー

DISCORD BRAKERS [ 4 ]

   2015年11月11日  

もう一人の自分は「イケメン騎士」で「魔法剣士」で「ハチミツ愛好家」!?

───イケメン騎士とその仲間たちと共に、音律魔法で「調律」された世界から飛び出した、三つの宝玉を回収せよ!
 

割とイケメン、更に最強。でも救いようのないハチミツ愛好家…な能天気なキラのペースに引きずられつつ、異次元世界「ルーン王国」から流星となって表れた三つの宝玉を探すため、藤崎奏は「もう一人の自分」こと、キラ=ウォルダーと共に宝玉回収に動き出す。

 

「キラが……私?」

 キラと話が出来る者を探す。すなわち、それが「もう一人のキラ」である。キラの今の話をまとめると、多分そういうことだ。

 でも、それってどういうことなんだろうか。
 まず初めに、性別が違う。そして見た目も全く違うし、正確だって恐らく正反対だ。それが、「話が出来た」だけで何故イコールキラになるのだろう?

 ……奏がそんなことを思っていると、

「こちらに来てから通信をした際のアロン様の話では、『元々の国』は一つで、同じ存在が次元を違えて存在していると。つまり、我がルーン王国とお前の住むこの国は、次元は違う場所にそれぞれあるが、『同じ存在』ということなのだ。だから、表面的には喋る言語も文化も見てくれも違うが、『同じ存在』を見つけると存在自体がシンクロして、強力な力を生み出すことが出来るそうなのだ」
「強力な、力……」
「そして二つの存在が出会ってシンクロすることで、今まで他の次元では分からなかった言葉も使えるようになると。逆を言えば、私と出会った奏は、我がルーン王国の者が話す言葉がわかるということだ。でも、まさか…この世界での自分が『ごくふつうのじょしこうせい』というものだったとはな」
 キラはそう言って、笑っていた。

「あ、あたしだって……まさか異次元の自分が近衛兵で男、なんて思わなかったわよ」

 ……普通、ファンタジー世界のヒロインだと、異世界の自分とかもう一人の自分て、お姫様とか、むしろ不思議な運命を背負った旅人の少女Aみたいなのが定番だと思っていた奏である。
 まさか、もう一人の自分が近衛兵で愛国心の塊で、なんかどこか憎めない、単純な奴。更に何故かちょっとイケメンの青年とは。
 もう一人がイケメンの分、顔は普通だけど乳は大きめな女、で釣り合いがとれたってことなのだろうか?
 うーん、良い様な悪い様な。何だかちょっとだけ複雑な奏である。

「うーん……」

 奏がそんなことを思っていると、いつのまにかキラは、何だかやけに晴れ晴れした表情を浮かべていた。

 ……なんだろう、この爽やかな表情は。
 晴れ晴れしているのに何故か不穏。さながら、晴れている日に降るお天気雨。
 奏がそんなことを思っていると、

「……さて。この国での協力者も得ることが出来たし、私の任務もきっと捗るであろう」
「協力者って。だ、だからあたしはごく普通の女子高生でっ……」
「せっかくだし、手伝ってみないか? 私の任務を」

 キラは奏の話を聞いているようで全く聞かないまま、そう言ってにやりと笑った。
 
 

 ……この強引さとずうずうしさ、いや神経の図太さは本当に自分なのだろうか?
 絶対に似ていないし、同一人物とは思えないんだけどなあ……奏は不信感を募らせていくも、
 
 

「て、手伝うって言ったって……だから、言ったじゃない! あたしは別にその、不思議な力とか超能力を持っているわけでもないし、何か強力なコネを持っているわけでもないし、特別な美人でもないしっ……」

 ……別に「美人」は関係ないかもしれないが、少しだけキラの先ほどの無礼発言に抵抗してやろうと、そんなことを織り交ぜながら奏が反論すると、

「ようやく『私自身』に出会うことは出来たが、肝心な任務はまだ遂行していないのだ。私には、この国での理屈や勝手、そして地理的事情なども分からないことが多すぎる」
「そ、それはそうだと思うけど……」
「それに、手伝ってくれるというのなら……お前に一つだけ、任務が終わるまで『魔法』を使わせてやろう」

 キラはそう言って、再び自分の左手をぐっと一度強く握った。
 そしてその手を再度開くと……何と、そこには「白い光」の玉が一つ、消えずに存在していた。
 どうやらその光の玉が、奏に何か一つだけ「魔法」を与えてくれるもの、らしい。

「……」
 この摩訶不思議な光景を目の当たりにし、奏は即答はせずに、その光の玉を見つめながらごくり、と息をのむ。

 

-ファンタジー
-, , ,