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アストラジルド~亡国を継ぐ者~カーネット王国編 第19話 逃避の終わり

   

突如現れた王国兵の姿に、レイシーは驚く。そして、ルイスは何やら考えを纏めたようだ。
一体この先、この兄妹はどうなってしまうのだろうか。

『一体、今から何が始まるのだろうか。ルイスは一体、“何をするつもりなのだろうか”』

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~』
【毎週 月曜日・金曜日に更新】

それは、来たるべき時の為に。

 

 
「――――……それ、は……」
「! 待って、プライン」

 口を開いた彼女を止めて、私は耳をすました。気のせいかとも思ったけれど、これは違う。

「姫?」

 私のただならない様子に、プラインが厳しい目つきで辺りを見回し始めた。その視線に答えるように、私は呟く。

「……音がするの。馬の駆ける音が」
「! ああ、馬ですか? それでしたら、きっと馬屋の者でしょう」

 今度は安心しきった顔をしたプラインを、私は真っ直ぐ見つめた。

「いいえ、違う」

 馬屋の者にしては、多く引き連れすぎだ。これは、おかしい。

「ねえプライン、どこか物影に隠れましょう」
「畏まりました、姫」

 彼女は素早く辺りを見回すと、車椅子を押した。そして、路地の影に身を隠し、様子を窺う。

 ――――音が近づいてきた。私は震える体を必死に落ち着かせて、息を吐いた。
 怖い。だが、プラインがいる。大丈夫だ。そう自分に言い聞かせながら、私は目を見開いた。

「!」

 先程まで私達のいた場所に、あっという間に二十を越える馬とその上に跨がる兵士達が現れたのだ。剣を持つその者達を見て、プラインが意識を研ぎ澄ますのがわかった。

 彼等に見つかったら、殺される。

 瞬間的にそう思った私は、ルイスのくれたペンダントに手を伸ばした。

 ――――ルイス。

 強く目を閉じた私の肩を、プラインが軽く叩く。

「姫、もう大丈夫です。どこかへ行ったようですわ」
「よ、よかった……」

 私は息を吐いて、車椅子の背に体を委ねた。どうなることかと思ったが、どうやら本当にあの者達は去って行ったようだ。

「カーネット王国の王国兵は、滅多に車を使いません。移動には馬を使うの」
「! で、では先程の兵士達は……!」
「ええ。“カーネット王国城付きの兵”です」

 カーネットの王族も、移動する際には馬を使う。それなのに、本城の使用人であるミッシェルが、車をどこから入手したのかが、今思えば不思議でならない。それに、ルイスが運転する方法を知っていたことにも驚かされたし、それをミッシェルが当然のように彼に尋ねたことにも疑問を抱いた。私が知らなかっただけか、それともまた、それにも理由があるのだろうか。

「戻りましょう。また奴等が戻って来るかもしれません」
「そう、ですね」

 王国兵は一体どこへ向かったのだろうか。あれほどの数の兵士だ。襲われれば、ひとたまりもない。
 もう既に、私達がプランジットに潜伏していることが知られたのか、それとも別件で王国兵がこの町に訪れているのか。それはわからないが、私は必死に祈った。

 ――――兄様……どうか、無事でいて。
 

 

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