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お客様も人間でしょ?

   

 学歴にこだわる美佐子。
 亜美は自分が諒と同じ高卒であることを明かし、それからの経緯を美佐子に伝えたのだった。

 

 
 亜美の登場に、美佐子の眉尻が不機嫌に上がる。
「私、オンナのスタッフには興味ないの。あなたはお呼びじゃないわ。」
「なるほど、男性好きの女性ですか。同性に敵を作るのがお上手なタイプでいらっしゃいますね。」
「なんですって?!」
 にっこり笑って美佐子に毒を吐く亜美。
 なんで亜美に接客を任せてしまったんだと、冷静さを取り戻しつつあるマスターは心底後悔した。
 亜美は平和主義者ではない。
 邪魔のものは排除するタイプに人間だ。
 似たもの親子であることを、すっかり忘れてしまっていた。
「失礼な店員ね!あんた以外の店員はいないの?!」
 すぐに怒りのボルテージが上がるあたり、美佐子の堪忍袋が破裂すまでの導火線は相当短いようだ。
「皆さんお忙しいので。私しか手が空いていません。マスターもほかのお客様の対応に追われています。私でよろしければ、心行くまでお相手させていただきますけど。」
 二年前にはなかった、不気味なまでの満面の営業スマイルを浮かべる亜美。

 ──なんだあの気味の悪い笑顔。

 ふとカウンターに視線を向けた心治の目に映った亜美のそれは、やはり亜美をよく知るものからすると、とにかく不気味なのである。
 大和も思うことは心治と同じようで、大和の表情がぎょっとしている。
 表情豊かな大和なら、そうなるのは致し方無い。
 その大和の顔をみた和彩があきれている。
 それでもすぐに表情が持ち直すから、やはり彼らはプロである。
 
 

 にっこりとほほ笑む亜美と、亜美をにらむ美佐子。
 美佐子からはとんでもなく真っ黒なムードが漂っているが、当の亜美はというとそれを丸ごと無視している。
「あんたのその笑顔。とても腹が立つんだけど。」
「人にはそれぞれ好みがあるので、お客様の癇に障る顔なんですね。それはすみません。生まれつきなので。」
「作り笑顔が気に食わないって言ってんのよ。馬鹿なの?あんたも小野寺君と同じパーなの?」
「小野寺さんに失礼です。」
 きっぱりと断言する亜美に、美佐子の怒りのボルテージがみるみる上がっていく。
「本当のことでしょ?」
「お客様の基準でお話しされているので、何と言っていいやら私にはわかりません。確かに私の頭はよくはないと思います。勉学は不得意分野だったので。」
 ペースの崩れない亜美。
 自分ばかりがペースを乱されているもの、美佐子には腹立たしい限りなのである。
「お育ちが良くないのは、お話していてもよーくわかりますわ。最終学歴はどこの高校かしら?どこか聞いてもマイナーな学校は、私は知らないけれど。」
 亜美を見下したように、鼻で笑ってあしらう。
「最終学歴、ですか。聞いてどうするんですか?」
 どうでもいいことを聞く人間だと、内心ため息をつく亜美。
「学歴を聞けば、その品性に欠けた性格も納得いくわ。私は有名女子音楽大学を卒業して、海外に音楽留学をした経歴があるのよ。」
 鼻高々に学歴をひけらかす美佐子。
「へぇ。そうですか。」
 それに全く興味を持たない亜美。
 亜美の態度が、美佐子はことごとく気にいらない。
「あなたはどうなのよ!いってごらんなさい!!」
 突っかかってこられるのも面倒だと思う人間がこの世の中にいるのかと思うと、やはり世界は広いのだ。
 新たに出会った人種だが、残念ながら全く持って魅力を感じない。

 ──残念すぎるなー。どっかいいとこないかと思ってたけど、見つけらんないや。仕方ない。

 人のいいところを探すのは比較的得意なのだが、さすがにこの性格ではカバーのしようがない。
「いいですよ。私の学歴でよければ、お話します。」
 プライドの高い人の鼻を折るのは気が進まないが、言わなきゃ引かないのはわかっているから渋々亜美は自分の学歴を話すことにした。
 
 
 
 
 

 

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