幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ラブストーリー

輪廻転生ヒーロー 第2話「たとえ君が忘れても」

   

――災悪の降り注いだ世界を救い、<英雄の少女>人峰灯火はその後、少年の前から姿を消した――

青春×純愛の現代ファンタジー
『輪廻転生ヒーロー』
【毎月 第4水曜日に更新】

「…“初めまして。灯火ちゃん”」

 

 

***

「あの…大丈夫?」
「…………」
「じゃ、ないよねぇ。ごめんね」

 灯火の気まずそうな声が、雨音と共に聞こえた。
 僕達は、校舎の屋根の下で二人、雨から身を守っていた。けれど、とっくに制服はびしょ濡れだ。それなのに、彼女は僕を連れて、屋根の下へと身を滑り込ませた。

「かなり濡れちゃったね」
「…………」

 会話は、特にない。灯火は一生懸命に話しかけてくれるけれど、僕が何も答えられなかった。答える勇気がなかったのだ。心配そうに僕を見上げる彼女。その眼差しも、僕の知っている灯火と同じなのに、“何かが決定的に違う”。そんな気がしてならなかった。

「えーっと、その…何で私の名前を知っていたの? 新入生だよね? 君」

 その言葉に違和感を覚えた。

「君だって、新入生だろ? その赤いリボンは一年生の色だし」
「! あー…」

 灯火は纏っているセーラー服のリボンに指を絡ませて、少し困ったように笑った。

 ――――また、灯火のセーラー服姿をこの目に映すことが出来るだなんて、今でもまだ信じられない。嬉しくて、どうにかなりそうだ。それと同時に、“消失感”も得たけれど。

「新入生……うん。一応、そうなっちゃうかな」

 曖昧な答え。

「何で、入学式にいなかったの?」
「――――私ね、留年してるんだ」

 留年――――?

「ダブったってこと?」
「恥ずかしながら、そうなります」

 その言葉の割に、彼女は笑みを崩さず明るく笑ってみせた。

「だから、入学式には出なかったんだぁ」
「…そう」

 

「じゃあ、僕よりも一つ年上?」
「うん、そうなるね」

 ――――

「? どうかした?」
「…………」

 僕と灯火は、“同い年だった”。それなのに、ここにいる灯火は僕よりも年齢が上だと言う。
 初めは、僕のことを覚えていないだけだと思った。けれど、それだけじゃない。年齢まで違うのはおかしい。
 ――――この子はもしかしたら、“僕の知る灯火ではないのかもしれない”。

「あっ、でもね、敬語は使わないでくれる?」

 少し口調は違うけれど、でも、声まで同じなのだ。彼女が『英雄の灯火』に違いない。僕の探していた少女と同一人物のはずだ。

「…ひとみね…とうか」
「! どうして…まで知ってるの? ――――……って、ま、待って! また濡れちゃうよ!?」
「…………」

 灯火の言葉を無視して、僕は再び雨の元に身を晒した。打ちつける雨粒を気にも留めず、しゃがみ込む。そして、水を含み泥と化した土に浅く指を埋めた。そして、書き出していく。
 

 

-ラブストーリー
-, , , , ,

輪廻転生ヒーロー 第1話第2話第3話第4話第5話

コメントを残す

おすすめ作品

射光 1

Love cannot be compelled 10

想いは空を翔る

射光 3

どうか傍にいて